安心・安全の面では、海外でのライドシェアと国内タクシーでの性犯罪発生件数の比較、2016年の軽井沢スキーバス転落事故にみる規制緩和に対するバス事業者における反省などを指摘。海外のライドシェアで、いわゆるワーキングプアを生むような雇用関連の問題が多数発生している点も挙げた。
「議論すべきところが議論できていないのではないか」
質疑応答の際、筆者から川鍋氏に次のように質問した。
「与野党を問わず、ライドシェア導入についてはいまだに賛否両論ある中、タクシー事業と自家用有償旅客運送の規制緩和に加えて、ライドシェア新法の議論が出ている。規制改革推進会議・第1回で、国交省側は『ライドシェア新法検討は考えていない』と発言しているにもかかわらず、第2回の最後に一部委員から新法制定が提案されるなど、議論のペースが速い。これまでの、国における議論の流れをどう感じているか?」
これに対して川鍋氏は「議論すべきところが議論できていないのではないか。安全の問題があり、また雇用の問題はほとんど議論されていない。国民の生命にかかわる、大事な議論なので、包括的かつデータに基づいた議論したいと我々は申し入れをしている」と答えるにとどめた。
このように、各方面に日本版ライドシェアについて取材をすると、それぞれの立場で社会環境の変化や市場変化を肌感覚で捉え、さまざまな手段を講じた改善を模索していることがわかる。一方で、国による全体議論は、“拙速に過ぎる”という印象も否めない。
国には「ライドシェアありき」ではなく、真の意味で「人中心」の観点での議論を求めたい。そして、地域交通の維持と改善に対する地域住民や地域事業者の思いと、デジタル化による産業競争力強化とのバランスを、さらにキメ細かく捉える姿勢を示してほしい。
規制改革推進会議 地域産業活性化ワーキング・グループは、2023年11月30日に第3回が開催された。ここで、同第2回の最後に意見書を出した委員有志が、「短期的対策等に関する論点について」という意見書を出している。
この中で「本来的には、ライドシェアに関する新法の制定を含む抜本策を速やかに議論する必要があるが、現状の移動難民の問題を少しでも改善していくため、当面の暫定的措置として、安全の確保を前提としつつ、既存規制について徹底的に見直す必要がある」(本文ママ)と記載されている。
こうした委員有志の声にも見られるように、同ワーキング・グループでの議論から、地域交通における社会情勢に対する「現実解」への意識の高まりを感じさせる。
繰り返すが、地域交通については「ライドシェアありき」ではなく、「人中心」が議論の中核であり目的であるべきだ。
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