急速に進む「日本版ライドシェア」議論の先は? 神奈川版ライドシェアの取材で見えた現在地

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「客観分析」におけるデータとしては、100km毎に何キロ乗車しているのかを示す「タクシー乗車率」を年代別や地域別で示した。

直近の数値は48%程度。慢性的なタクシー不足とされていたいわゆるバブル期で56~57%、経済が冷え込んだいわゆるリーマンショックの際で39%程度であり、「43~48%程度が適切なゾーン」との認識を示す。

また、地域別では名古屋が42.6%、東京都心で47.1%と、連合会の認識では適切なゾーンに入っている一方で、軽井沢で51.9%、また北海道のニセコで52.5%とバブル期に近い数値にあることもわかった(いずれも2022年度データ)。

京急三崎口駅の駅前ロータリーに停まるタクシー(筆者撮影)
京急三崎口駅の駅前ロータリーに停まるタクシー(筆者撮影)

もう1つの主要データとして、タクシーアプリの配車依頼とマッチング率がある。2023年10月の都市部でのマッチング率は、平均9割と高い。

一方で、午前中に台風の影響を受けた9月8日は、午前中にマッチング率が大きく落ち込んでいるが、こうした一時的な供給不足は月に数回程度であり、「都市部では極端な供給不足とまでは言えない」との見解だ。

また、世田谷区など住居専用地域が多く地価の高いエリアでは営業所設置が難しいため、マッチング率が低いという。

そのほか、神奈川版ライドシェアの実施を検討している三浦市も、マッチングアプリ「GO」のデータを公開したが、需要は少なく、さらに「マッチング率が恒久的に崩れている」と説明した。

なお、神奈川版ライドシェア検討会議の議事録によれば、地元タクシー事業者のいづみタクシーでも「GO」を採用しているが、利用は同社全需の5%以下と低く、そのほかは電話での対応である。今回、連合会が示したデータが、三浦市のタクシー情勢全体を示しているとは言えないだろう。

タクシー乗務員は増加の見込み

次に、都市部、観光地、地方/過疎地での供給回復見込みについて。

都市部(東京・大阪・神奈川)では、運賃改定後に歩合制である乗務員の増加ペースが上がっている。また、二種免許の取得期間の短縮、多言語化による在日外国人乗務員の掘り起こしなど、警察庁に対する規制緩和要望が実現すれば、乗務員は増加すると見込む。

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