パレスホテルに10年住む総支配人の「改装秘話」 黒船襲来で決断「過去のすべてを捨てた」大改装

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――具体的にどのように変えたのでしょうか。

ホテル全体としては、ディスティネーションホテル(目的地となるホテル)を目指した。一部の外資系高級ホテルは立地が不便でも、好きな人が来てくれる。ホテルに「魂」がこもっているからだ。

一方で以前のパレスホテルの利用は「手段」であり、「目的地」ではなかった。私自身もロケーションを武器にした営業をしていた。

パレスホテル東京の改装に当たっても、「建物の内装は外資系みたいだけど、中身は変わらなかったね」ということにはならないように、商品開発、営業、マーケティングで同じ価値観を持つことが大事だと共有した。

反対されても客室にはテラスをつけた

客室は全室45平米以上で、広々としている。訪日外国人にも人気のホテルだ(記者撮影)

「うちらしさ」を出すために、ひらめきなど感覚的な部分を重視した。例えば、客室の一部にはテラスをつけた。日本には四季があり夏は蒸し暑く冬は寒いため、テラスをつけても半分くらいしか使えない。だから反対されたが、パリやミラノのホテルにはテラスがあるというイメージが頭の中にあった。

前身のパレスホテルはレストランをすべて直営でやっていた。そこに「異文化」を入れるために、中華と寿司は街で評判のレストランを招いた。鮨かねさかは当時、ホテル初出店だった。とてつもない顧客と数字を持っているレストランが同じホテルにあることは、いい影響になった。

――外資系ホテルのように宿泊特化ではなく、従前のパレスホテルと同じグランドホテル(宴会場なども併設した大規模ホテル)の形は残したのですね。

営業利益率が高くなるように、外資系と同じような宿泊に振り切った提案をしたことがある。しかし小林社長から「ビジネスとしては間違っていないが、雇用を守ることを前提としてホテルを作ってくれ」と言われ、グランドホテルを継承することにした。

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