パレスホテルに10年住む総支配人の「改装秘話」 黒船襲来で決断「過去のすべてを捨てた」大改装

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――パレスホテル東京は前身から大きく変わりました。改装はどのような意思決定で行われたのでしょうか。

当時、小林社長はパレスホテルに危機感を持っていて、「過去のすべてを捨てるくらいの改装をしろ」という指示があった。

各部門の幹部は全員先輩だった。彼らに改装について意見を聞くと、「これは残してくれるよな」などと言われる。そこで、これまでの顧客などを意識したレガシーを多く盛り込んだ改装案を出すと、「これでは変われないよ」と小林社長に一蹴された。

「われわれも開国をしましょう」と説得

大きく変わることについて反発もあったが、「黒船が来て(外資系ホテルとの違いを)知ったじゃないですか。われわれも開国をしましょう」と説得した。

渡部氏は47歳でパレスホテル東京の総支配人に就任した。日本の名門ホテルでは異例の若さだった(撮影:梅谷秀司)

宴会は日本の名門ホテル、レストランは個人客を呼び込める街のレストラン、宿泊は外資系高級ホテルをターゲットにする戦略でやってみようということになった。「こんな都合のよいターゲティングあるのかよ」と当時は思ったものだった。

1990年以降は多くの外資系高級ホテル(編集部注:1992年にフォーシーズンズホテル椿山荘東京が開業。その後1994年にパークハイアット東京、ウェスティンホテル東京などが続く)が日本に参入してきた。外資系高級ホテルは、ターゲットを絞って、顧客に合わせたホテルを作るというブランドポートフォリオの考え方を持っていた。

国内系には、顧客を絞り込むという考え方はなく、前身のパレスホテルを含めた総合シティホテルは、宴会、レストラン、宿泊の全部をやっていた。宿泊であれば修学旅行から大統領まで、宴会であれば謝恩会から企業のパーティーまで受け入れていた。

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