ごみ収集車から流れる「音楽」の知られざるひみつ かつて「放送中止騒動」も、「赤とんぼ」が多い理由

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創業当時、ノボル電機では拡声器の製造を行っていたが、アンプとセットで買ってもらわないと自社ブランドの育成やシェアを伸ばすことができないと判断し、1950年頃からはアンプの製造を始めた。

同時期に自治体より、「拡声装置を利用してごみ収集が終わったことを住民に簡単にお知らせする方法がないか」という相談を受けた。

同社は、「何かメロディを流せばいいのではないか」と考えオルゴールを利用することを決め、機械式のオルゴールを拡声するトランジスタアンプ(オルゴールアンプ)を開発。ぜんまい式のオルゴールユニットをメーカーから購入し、それをアンプの中にそのまま設置してモーターでオルゴールを回すようにし、そこから出る音を増幅して拡声させる仕組みにした。

ノボル電機本社工場と猪奥社長(筆者撮影)

このようにして開発されたオルゴールアンプにより、清掃車がメロディを鳴らしながら家庭ごみを収集するようになっていった。

当時はポリバケツを利用したごみ排出が始まった頃であったため、メロディが流れてくると住民はごみが収集されたと認識し、バケツを自宅に引き上げていった。

清掃差別がもたらしたオルゴールアンプの進化

ノボル電機が開発したオルゴールアンプは、時代の流れというわけではなく、意外な理由で機械式から電子式に変えられていった。それは今で言うところの「清掃差別」と受け止められるエピソードがあったからである。

当時のオルゴールは宝石箱に仕組まれており、高級感あるイメージを持たせて販売されていた。ごみ収集車にオルゴールを載せて使用することにメーカーから異論が出て、ノボル電機へのオルゴールの供給を止めてしまった。

現在のオルゴールアンプ(筆者撮影)

当時ノボル電機では、すでに多くの自治体の清掃車に機械式のオルゴールアンプを供給していたため、代替手段を考案する必要があった。

そこで機械式を諦めて電子式のオルゴールの開発を始め、アナログ回路からデジタル回路へと内部構造を変えた。今では考えられないエピソードの中で、オルゴールアンプは進化を遂げた。

オルゴールアンプは、後述するSDカード式の音源によるアンプで代用が利くため生産数は年間200~300にとどまる。しかし、省スペースで済むという利点があるため、現在でも市場を独占している。

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