恒常性の維持は意識とは無関係に、神経系と内分泌系(ホルモン)の働きによりコントロールされていますが、特に自律神経が大きな役割を果たしています。
皮膚が寒さを感じると、その情報が脳の温度調節中枢である視床下部へと伝わります。視床下部は自律神経のうち、運動時や興奮時に働く交感神経を優位な状態にして、筋肉や肝臓のエネルギー消費を増やして、基礎代謝を上げます。それとともに、手足など末梢と皮下の血管を収縮させて熱の放散を抑えます。
いわば、発熱を促しつつ断熱性を高めることで、生命に直結する深部温度が低下するのを防ぐのです。しかし、体が冷えた状態は健康上、決して望ましい状態ではありません。手足や皮下の血管が縮んで、血行が悪くなるからです。
血液は酸素や栄養だけでなく、熱や免疫細胞(白血球)を運ぶ重要な役割があります。したがって、血行が悪くなれば、体は疲れやすくなるとともに免疫機能が低下して、かぜやインフルエンザなどの感染症に罹患しやすくなってしまいます。
我慢を辞めれば冷えない
問題なのは、この体温調節機能が適切に働かず、暖かい場所にいても手足が温まらず、不快な「冷え」が続くことです。
外気温や室温が高いにもかかわらず、手足などの冷えが続くことを一般的に冷え性(冷え症) といいますが、この根本にあるのは、自律神経が適切に働くことができなくなった状態、よくいわれる自律神経のバランスが乱れた状態です。
現代の私たちの生活では、暖かい部屋で目覚めたあと、寒い外を歩いて暖かい電車に乗り、また冷たい外気にさらされ、オフィスではまた暖気に包まれる……といった具合に、温度変化が頻繁に繰り返されます。
30万年とも40万年ともいわれる人類の長い歴史のなかで、私たちの環境が冬でも暖かい部屋で快適に過ごせるようになったのはつい最近ですから、このように目まぐるしく変わる外気温度の変化に、視床下部や自律神経がうまく適応できないのも無理はないのです。
視床下部、自律神経の負担を減らし、不快な冷えを予防するには、できるだけ“自分が感じる寒暖差を少なくすること”が肝心です。言い換えれば、寒さと暑さを我慢しないことです。
特に過去、「我慢が美徳」とされた世代、体育会系で「NO PAIN NO GAIN」で育てられた方は、我慢が体に染みついていますので、 健康のために頭を切り替えましょう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら