突然「ベンチャー転職する人」中高年が知らぬ変化 日本の転職市場に関わってきた筆者の視点

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1990年代当時、筆者は転職支援の仕事をしていましたが、その当時、ベンチャーが彼らの第一希望であったのではなく、大企業に就職できないので選ぶという「消極的な選択」でした。悩ましかったのは、当時は転職が今ほど活発でなかったことです。ベンチャーに入社したあとに選択ミスであったと自覚したとしても、大企業への転職は難しく、選択肢は別のベンチャー企業しかない、というケースも多々ありました。

当時、日本の大企業はベンチャー企業から人材を採用することなんて考えていない時代でした。それだけ、大企業ネームバリューが強く、採用で相手にしていない状況だったと言えます。そのため、ベンチャー企業内での転職に特化した転職エージェントが登場するなど、転職市場における大企業とベンチャーの間には、高い壁のようなものが存在していたように思います。

ところが、2020年以降、状況は変わりつつあります。大企業からベンチャー企業への転職が大幅に増えたのです。

エン・ジャパンが運営する若年層向け転職サイト「AMBI(アンビ)」では、2021年4~9月に大企業からスタートアップに移った件数が、2018年4~9月比で7.1倍にも増加。全体の転職者数の伸び(3.8倍)を大きく上回りました。全体に占める比率も21.4%と3年前より約13ポイント上昇しました。

「大丈夫?」から「うらやましい」へ

筆者の知人で社会人3年目のDさんも、大手総合商社からデータ分析系ベンチャーに転職。現在は「有意義な毎日を過ごしている」と話してくれました。

同じように大企業からベンチャーに転職しました……との報告が2020年以降に増えました。以前であれば珍しい転職であり「大丈夫?」と心配する声も出たものでしたが、今では「うらやましい」とか「転職したら、職場の雰囲気とか教えて」と興味が高いことを感じる声を耳にします。転職エージェントでも大企業とベンチャーをつなぐような企業が増えてきています。それだけ転職市場で中心的な動きになってきた証拠なのでしょう。

どうして、そのようなことが起きてきたのでしょうか? その理由は大企業組織の閉塞感と、ベンチャー企業における処遇の改善と考えます。

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