例外は、既存の証券口座の中に、買い値の何倍にもなっている株式や投資信託などがある場合だ。こうしたときは、税金を払ってまで現金化せずにそのまま運用するほうが、資金をNISA口座に移すよりも有利な場合がありうる。だが多くの場合、リスクを取った投資はNISA口座に早く移し、その後もNISA口座での運用資金を大きくしていくことが正解になる場合が多い。
NISA口座の利用は「大きく、早く」と申し上げておく。
2つの投資枠をどう使いこなせばいいのか
(2)「年間投資枠360万円」
「つみたて投資枠」で120万円、投資タイミングが自由な「成長投資枠」で240万円まで、年間に投資可能だ。
運用資金をNISA口座に大きく、早く、と言っても、資金を好きなだけ自由に動かせるわけではない。NISA口座には、つみたて投資枠で120万円、成長投資枠で240万円という入金ルールがある。この2つの投資枠は「単なる入金ルールの違い」だと理解するといい。
前者では、その名のとおり定期的な積み立て投資が必要である一方、後者では年間240万円までいつでも、一括でも、分割でも投資できる。成長投資枠は、枠内の金額であれば、好きなときに好きな金額だけ投資できるので自由度が高い。
ただ、成長投資枠の自由度は、例えば、投資に回せるお金が新たにできたときに使うといいのであって、「投資するタイミングを計って、いいタイミングで投資しよう」、あるいは「向こう何年かの間に有望な成果の上がる商品を選んで投資しよう」とする投資家の裁量に利用することは無意味だ。
(A)いつが投資にいい(悪い)タイミングなのかは、投資家は(プロでも)判断できない
(B)どの投資対象商品が平均よりもいいのか(悪いのか)は、投資家は(プロでも)事前には判断できない
この2点は、金融・運用業界にとって不都合だが、残念ながら真実だ。
論理的な帰結はこうだ。投資タイミングでも、商品選択でも、成長投資枠の自由度には投資上プラスの意味はない。つみたて投資枠と成長投資枠に共通なベストの商品があれば、両者の違いは単に入金ルールの違いなので、同じものを買えばいい。
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