人生100年、学校教育は何をどこまで教えるのか 日本人が幸せに生きていくために知るべきこと

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遠藤 ただそれも、絶対的なものではありません。いまの日本国憲法の中で生きていくならそうだということで、他の国では違いますし、あるいは50年後、100年後の日本には、別の社会規範があるかもしれない。

その範囲を、善悪の判断に偏らず、冷静かつ柔軟にそのときどきで決めていけるかが大事ですね。

特に、感情論とか道徳論とか伝統といったものとごちゃ混ぜになっている面もあると思うので、そうしたものとパブリックな価値を切り分けていくことが必要でしょう。

個人のウェルビーイングと社会のウェルビーイング

宮田 そういったことは、義務教育でないとできないことだと思います。自らお金を払って大学で学ぶことではないかもしれないけれど、必要なことではある。

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個人としてのウェルビーイングを高めることは、各人が自己実現の中で取り組めばいい。では、誰もがよりよく生きるという意味での全体のウェルビーイングをどう担保すればいいでしょうか。

国や県として、あるいは市や町としてコミュニティの維持は重要なことですが、個人のリスクテイクでそれをどこまでカバーできるのか、あるいはカバーすべきなのか。

誰ひとり取り残さない、あるいはコミュニティを維持するといった、個人を超える課題を解決していくのも学校教育の使命ではないかと考えています。この点はいかがでしょうか。

遠藤 社会のウェルビーイングが実現していないと、個人のウェルビーイングも実現しないでしょう。極端な例でいえば、毎日爆弾が降ってくる中で、個人として安定した幸せな生活をしていくのは難しい。

だから、幸せになれる人にはなってもらって、後はほったらかしでいいということはない。個人が幸せに生きられる社会と、すべての人が幸せに生きられる社会の両方を目指していくのが、教育の使命だと思います。

(第2回に続く)

遠藤 洋路 熊本市教育長

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えんどう ひろみち / Hiromichi Endo

熊本市教育長。高知県生まれ、埼玉県育ち。1997年文部省(現・文部科学省)入省。2002年ハーバード大学ケネディ行政大学院修了(公共政策学修士)。2007年4月熊本県教育庁社会教育課課長。2009年8月内閣官房知的財産戦略推進事務局総括補佐。2010年10月同省退職、同年11月より「世界に誇れ、世界で戦える日本」のための人材・政策・組織を創るために起業した『青山社中株式会社』の共同代表を務める。2017年4月より現職。2022年5月より兵庫教育大学客員教授を兼任。著書に『みんなの「今」を幸せにする学校』(時事通信社、2022年)

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宮田 純也 一般社団法人未来の先生フォーラム代表理事

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みやた なおや / Naoya Miyata

早稲田大学高等学院、早稲田大学教育学部教育学科教育学専攻教育学専修卒業、早稲田大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。日本最大級の教育イベント「未来の先生フォーラム」創設や2億7100万円の奨学金設立など、様々な教育に関する企画や新規事業を実施。株式会社未来の学校教育 代表取締役などを務める。編著書に『SCHOOL SHIFT』(明治図書出版)。監修に『16歳からのライフ・シフト』(東洋経済新報社)。

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