30代後半で同僚と恋仲に!晩婚のリアル 大人の経済力を背景に「即断即決」

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駅前のマンションでの便利な暮らしが気に入っている直美さんは、昭男さんがかつての家族と一緒に建てた郊外の一戸建てに移るつもりはなかった。一方の昭男さんも自己資金だけで建てた自分の家への思い入れもあった。それぞれの生活が確立している晩婚さん同士の結婚では、実際にどの場所にどのような形態で住むのかが議論になりやすいのだ。

長男の妊娠で急展開

ふたりの背中を押してくれたのは長男の妊娠だった。昭男さんは自宅を売りに出すことを即断し、直美さんは結婚する意志を固めた。昨年の春先のことだ。

「子どもがこんなにかわいいものだとは知りませんでした。家で何もせずに子どもを見ているだけでも、しみじみとした幸せを味わえる。独身のときは沖縄の海をボーっと眺めることが好きでしたが、それとは(質的に)違った感覚です。子どもやダンナのためにゴハンを作ることも、いい経験かなと思っています。ひとりの気楽さはありませんけどね」

ダラダラした性格で片づけは不得意だと自覚している直美さん。子ども中心の生活であり、家の中は散らかっているのだろう。古風な昭男さんとは言い合いになることもあったが、最近は昭男さんのほうが直美さんを受け入れ、週末は料理もしてくれるようになった。頑固一徹な昭男さんだが、前妻との破綻した結婚生活の反省が生かされている気がする。

前妻との間の子どもたちとの関係は大丈夫なのか。直美さんによれば、「(昭男さんは)嫌われていて会ってもらえないけれど、養育費は払い続けている」状況だという。長男が生まれたばかりの直美さんとしては、心穏やかでいられない要素だと思うが、「財布は別々」なので今のところ割り切れている。

「銀行引き落としができるものはすべてダンナの口座からで、食費や雑費は私が払っています。養育費はもちろんダンナが払っているので、私は関知していません。晩婚さんの強みは経済力だと思います」

直美さんと筆者の会食を、おとなしく眺めていた子どもがむずかり始めた。僕のお父さんとお母さんの内情をあまり暴いてくれるな、と言っているのだろうか。この子が親離れしたとき、直美さんと昭男さんは会社の定年を迎えている。それから恋人同士のような夫婦関係を温め直すのかもしれない。
 

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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