インフルエンザとコロナ「同時流行」起きるワケ なぜ夏にもインフルエンザの流行が続いたのか

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2020/2021年、2021/2022年の冬期にインフルエンザは流行しなかった。2022/2023年は流行したが、規模は小さかった。つまり、3年間ほどインフルエンザウイルスに触れていない人がたくさんいた、ということだ。そこにウイルスが戻ってきたため、季節外れの流行が続いたのだ。

一方で、夏の間はコロナの流行が続いていたため、ウイルス同士が干渉し、インフルエンザは大きな流行とはならなかった。コロナがいなければ、夏期の流行は、もっと大規模となった可能性がある。そしてコロナの流行が沈静化した秋以降、インフルエンザが本格的に流行し始めた。

現在、日本国内で流行しているインフルエンザは、A香港型が主だ。例年では、インフルエンザの本格的な流行は12月に始まり2月末に終わるので、その期間は3カ月ほどだ。今の流行は10月に拡大しているので、12月末には収束するはずだ。しかしながら、Aソ連型やB型のウイルスに対する免疫もおしなべて低いので、立て続けに次の流行が起きる可能性がある。

A型のインフルエンザには2つある

インフルエンザウイルスについて復習しておくと、A型のインフルエンザにはAソ連型とA香港型がある。Aソ連型のウイルスはウイルスの表面にある2つのタンパク質のヘマグルチニンが1型で、ノイラミニダーゼも1型であり、H1N1と表記される、2009年に新型インフルエンザとして流行したウイルスが、そのまま季節性インフルエンザウイルスとなって流行を繰り返している。比較的症状は軽いことが特徴だ。

一方、A香港型(H3N2)は症状が強くて重症化しやすい。A型は遺伝子の組み換えによって新たなウイルスが生じることがある。最近は哺乳類での感染例が多数報告され、新型インフルエンザとして人への感染が危惧される高病原性鳥インフルエンザはH5N1だ。もう一つ、B型のインフルエンザは、症状は中等度であり、A型のウイルスと異なり遺伝子の組み換えによる新種の出現はない。

インフルエンザワクチンには、Aソ連型と香港型、B型2系統の成分が含まれている。日本で承認され流通しているワクチンは、すべて同じ内容であり、流行しうるウイルスすべてに効果がある。ワクチン接種後2週間ほどで抗体が作られ、3カ月ほどは高い効果が持続するが、5カ月目にはピークの半分ほどに抗体価が低下する。今年はシーズンが長い可能性があり、2月末に入試など重大なイベントが待ち受けている人は、2回目の接種を考えてもよいだろう。

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