「捨てる深海魚」に蒲郡市が編み出した"旨味" メヒカリ、白ムツ、ニギスを使ったフライの味は

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黒田さんは蒲郡市観光協会や蒲郡商工会議所などが開催するイベントを手伝う中で小林さんと出会い、5年前には東京・日比谷公園で開催された「ジャパンフィッシャーマンズフェスティバル」で竹島水族館が監修した「深海てんぷら」を販売した。

「そのときに蒲郡でもこんなイベントをやってみたいと小林館長と盛り上がって、翌年の2019年に初めて『がまごおり深海魚まつり』を開催しました。会場が竹島水族館の駐車場だったにもかかわらず2日間で1万人も集まり、手応えを感じました」(黒田さん)

今年の「がまごおり深海魚まつり」では、地元の三谷水産高校と黒田さんが共同で開発を進めている深海魚の缶詰の人気投票も行われた。試作したトマトの魚肉ボールとアヒージョ、角煮、バター醤油の4種類の中でいちばん人気だったのは、彩りの良いアヒージョ。これからさらに改良をくわえて、来年1月に発売する。

三谷水産高校による深海魚缶詰の投票コーナーとヤミーフィッシュプロジェクトを紹介するブース(筆者撮影)

サブスクで未利用魚が毎月届くサービスも

また、11月からは未利用魚が毎月届くサブスクリプションサービス、「ヤミーフィッシュプロジェクト」もスタートした。ヤミーフィッシュとは、おいしいの“yummy”と深海の“闇”を掛け合わせた“おいしい深海魚”を表す造語で、水揚げされた直後に頭や内臓、骨、うろこを取り除いて瞬間冷凍した未利用魚を届けるというもの。2人前×4食分がセットになって、月4000円。

今年1月、黒田さんは福島県いわき市で地域資源を生かした商品のブランディングやプロデュースを手がけるいわきユナイトの植松謙社長らとともに「メヒカリ普及協会」を設立した。メヒカリは福島県いわき市や静岡県沼津市でも獲れることから、互いに協力してメヒカリの普及に向けたイベントの企画・開催や、情報発信をしていくという。

「メヒカリの普及活動と同時進行で取り組んでいかねばならないのが、第二のメヒカリ、つまり、未利用魚の中から新たな商品を開発することだと思っています。温暖化などでメヒカリがいつ獲れなくなるかわかりませんから。全国の深海魚が獲れる町と連携して、深海魚サミットを開催するのが今の目標です」(黒田さん)

食べられる未利用魚がもっと増えていけば、町おこしのみならず、低迷している漁業の活性化や新たな和食文化の醸成にもつながっていく。ひいては食料問題を解決する糸口にもなる。まさに良いことずくめなのである。今後も未利用魚の活用法を追いかけていきたい。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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