「捨てる深海魚」に蒲郡市が編み出した"旨味" メヒカリ、白ムツ、ニギスを使ったフライの味は
三河湾に面した蒲郡市の漁港には、県内に4隻しかない深海魚を獲る沖合底曳網漁船すべてが所属しており、蒲郡で水揚げされた深海魚は県内の9割以上にものぼる。いわば蒲郡市は「深海魚のまち」なのである。
まつりでは、深海魚の展示数日本一の「竹島水族館」の小林龍二館長をはじめ、深海魚に携わる人々によるトークライブやクイズ大会などのステージイベントのほか、メヒカリやニギス、ムツなどの深海魚を使ったグルメの販売ブースも。
筆者は白ムツとニギスのフライを盛り合わせた「蒲郡産深海魚おまかせセット」(500円)を購入して食べたが、いずれもクセがなく、とても上品な味わい。バンズに挟んでフィッシュバーガーとして売り出したら間違いなく売れるだろう。
未利用魚のメヒカリを小中学校の給食に
深海魚グルメの販売ブースで長蛇の列ができていたのが、「メヒカリ唐揚げ」と「深海てんぷら」。豊橋市でそれらの製造を手がけている「まんてん.」の黒田孝弘社長と前出の小林龍二館長が「がまごおり深海魚まつり」の発起人だという。
黒田さんは高校卒業後、業務用食材卸問屋で14年間働いた後、モノづくりがしたいという思いから、32歳のときに独立して有限会社まんてん.を設立。当初はスーパー向けに青森県産のイカを使ったイカリングフライやゲソの唐揚げを卸していた。
「起業して3年が経ったある日、蒲郡の水産仲卸業者が『このままでは値が付かないから価値のある魚にしてほしい』と見たことのない魚を持ってきたんです。それが蒲郡市で水揚げされる深海200~400mに生息するメヒカリでした」と、黒田さん。
メヒカリの正式名はアオメエソ。エソは練り物の原料になるが、体長15cmほどしかないメヒカリは加工に手間がかかるため、当時は使い道がなかったのだ。メヒカリについて調べてみると、カルシウムはシシャモの約2倍、鉄分にいたってはマグロやカツオの約3倍もあり、栄養価が高いことがわかった。
「頭と内臓を取って唐揚げにして食べてみると、とてもおいしかったんです。深海魚ゆえにすぐに鮮度が落ちてしまうため、蒲郡でも漁港のある三谷や西浦、形原などのエリアでは昔から食べられていたのだと思います」(黒田さん)
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