思わせぶりなメッセージで万引が年18%減った訳 ちょっとした仕掛けでお困りごとは解決する

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監視カメラを設置すれば一定の抑止効果は期待できる。しかし、設置には費用がかかるうえに、死角なく店内を網羅することや監視カメラの映像をチェックし続けることは難しい。

そこで、常滑警察署と一緒に「万引き防止 実験II」と書かれたカード、および「防カメピント調整」と書かれたシートを考案した。

「万引き防止 実験II」のカードは縦7cm×横5cmの小さな紙片をラミネート加工したものである。商品棚の値札入れにさりげなく設置することで、人々に何かの実験をしていることを気づかせるものである。買い物客にとっては特に気になるものではないが、万引きをしようとしていた人を警戒させて犯行を未然に防ぐことを狙っている。

「防カメピント調整」のシートはA4の紙に印刷してラミネート加工したものである。万引き犯の多くは防犯カメラに気づいていないので、万引きをしようとしていた人に防犯カメラのピントの調整に使うものだと思わせることを通して、監視カメラに気づいてもらうことを狙っている。

「防カメピント調整」のシート(撮影:中川元宏)

年間を通して被害額が18.4%減少

2020年9月1日(火)から2021年8月31日(火)にかけてベイシアフードセンター常滑店にて仕掛けの効果を検証したところ、年間を通して万引きの被害額が18.4%減少した。この一連の取り組みが認められ、愛知県常滑警察署長から感謝状を頂戴したのはいい思い出である。

行動変容を強要することは実は簡単である。従来の行動を取り除いてしまえばよい。

たとえば、エスカレーターではなく階段を利用してもらいたいのなら、エスカレーターを止めてしまえばよい。ヘルシーな食事を摂ってほしければ、ヘルシーな食事しか提供しなければよい。もしくは、ルールや罰則を追加するアプローチもある。ポイ捨て問題をなくすためにポイ捨てを禁止する条例を定めることは実際に行われているし、軽犯罪法第1条27号の違反にもなる。

しかし、これらはいずれも相手を不快にさせるアプローチであり、避けられるなら避けるべきであろう。したがって、仕掛学では、従来の選択肢は残しつつ、それよりも魅力的な選択肢を用意することを考える。

人には変化を避けたり未知のものを避けたりする「現状維持バイアス」がある。したがって、基本的には従来の行動が選ばれ、新たな行動は選ばれにくい。新たな行動はわざわざ選びたくなるような工夫が必要になる。そういうときこそ仕掛学の出番である。

松村 真宏 大阪大学大学院経済学研究科教授

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まつむら なおひろ / Naohiro Matsumura

大阪大学大学院経済学研究科教授。1975年大阪生まれ。大阪大学基礎工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。2004年より大阪大学大学院経済学研究科講師、2007年より同大学院准教授を経て現在に至る。2004年イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校客員研究員、2012~2013年スタンフォード大学客員研究員。趣味は娘たちを応援することと、猫のひじきと遊ぶこと(遊んでもらうこと)。

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