思わせぶりなメッセージで万引が年18%減った訳 ちょっとした仕掛けでお困りごとは解決する

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大阪環状線総選挙は、エスカレーターと上り専用階段が併設されているJR大阪駅の環状線ホームの東端階段で実施した。階段の天井に設置したセンサーで天満派と福島派のそれぞれの階段利用者数を計測し、階段を登りきったところに設置したモニターに集計結果をリアルタイムで表示した。

猛暑のなかで、7%増の大健闘

実施期間は2019年7月30日(火)から2019年8月5日(月)の7日間である。その直後の1週間の階段利用者数と比較することで効果を検証した。週末の影響やなにわ淀川花火大会(8月10日)の影響などを踏まえて統計的に分析したところ、階段利用者は1日あたり1342人増えたという結果になった。これは階段利用者数の7%に相当する人数である。大阪環状線総選挙を実施した期間は、最高気温の平均が35.8度と猛暑日の続く1週間であったことを踏まえると、よく健闘した仕掛けだといえるだろう。

仕掛けは従来の行動の選択肢を残したまま、新たな行動の選択肢を追加するものである。「大阪環状線総選挙」の例でいうと、エスカレーターを使うという従来の選択肢に、投票できる階段という新たな選択肢を追加したことになる。

従来の行動の選択肢を残すのは、行動変容を強要しないようにするためである。階段で投票できるからといって、階段を使わないといけないわけではない。興味をもってくれた人だけが階段を使えるようにすることで、仕掛けを無理なく社会に導入することが可能になる。

ある試みで、年間を通して万引きの被害額が18.4%減少したケースもある。

それが、「万引き防止 実験II」、「防カメピント調整」だ。

「万引き防止 実験 II」の紙(写真提供:中川元宏)

万引き防止策として、万引き防止ポスターの掲示や店内放送、店舗責任者に対する万引防止対策講習の実施など、日本全国でさまざまな取り組みが行われている。これらの対策が功を奏してか、万引きの認知件数は減少傾向にある。

しかし、令和元年の万引の認知件数は9万3,812件もあり、依然として社会の大きな問題となっている。

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