新垣結衣が7分間語り続けた「欲との向き合い方」 新境地と言われる映画『正欲』で感じた本音

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(C)2021 朝井リョウ/新潮社(C)2023「正欲」製作委員会  

『正欲』でこれまでの明るくはつらつとしたイメージとは異なるキャラクターを演じたことが、“新垣結衣の新境地”を開拓したとの声があるが、本人の見方は少し違うようだ。 

「私は特に新境地とは思っていなくて。皆さん、それぞれが持ってくださっている新垣結衣のイメージがあって、それもちょっとずつ違うと思います。『正欲』の役柄は、おそらく今まで皆さんのイメージの中にはなかったものなのだろうなと。

でも、私はお芝居のお仕事では、作品が変われば違う人を演じるし、どれもが新しく、“初めて”という感覚です。今回の夏月が今までやってきた役と特別違うのかって言われると、『いや、全部違ったよね』って。すべてが積み重ねの一つなんです」 

「欲望は、あってよいものだと思いたい」

「多様性」という言葉が広く使われるようになったが、社会にはまだまだ不寛容な部分が多い。例えば、マイノリティとの共生が難しい環境や、自分の気持ちを公にしても理解されない人たちは存在する。映画『正欲』は、正しさと欲望を中心に私たちの偏見や先入観を明らかにし、多様性の真の意味や受け入れ方を考えさせる作品となっている。 

(C)2021 朝井リョウ/新潮社(C)2023「正欲」製作委員会 

新垣さんも作品の中で、「それでも私が、私たちが抱えている欲望は、あってよいものだと思いたい」というセリフを通じて、物語の核心を伝えている。 

「そのセリフに通じることですが、『あってはいけない感情なんてこの世にはない』という言葉に一番、共感しました。劇中で描かれているのは、他人に知られたくない指向をずっと秘密として抱えながら生きていくこと。その影響で、日々の生活の中でも、自分とは異なる感覚や生き方を持つ他者の存在と交わることができない。自分だけがこの世界で異物のように感じ、居場所がないという感覚になる。それは、社会から排除されたような気持ちに近いかもしれません」 

「あくまで私の想像ですが」と言葉を選びながらも、「多くの人が共存していく中でのシンプルながらも難しい問題」とその思いを語った。 

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