本書の中で特に大事だと私が感じたのは、「無形資産」の話です。無形資産には、スキルなど所得を得るための生産性資産、心身の健康などの活力資産、変化に柔軟に対応する変身資産などがありますよね。このうちの生産性資産においては、スキルを身につけるためにハードワークもいとわない、という時期があってもいいのではないでしょうか。
私にとってそれは、12年間の新聞記者時代です。めちゃくちゃつらい労働でしたが、その間に体に染みついたインタビュー能力や原稿を早く書く能力は、いまだに大いに役立っています。死ぬほどつらい労働をさせられたからこそ、体が覚えているのです。
もちろんブラック企業を推奨しているわけではありません。しかし一方で、多くの企業がホワイト化しすぎて、若手にとっては物足りなくなっているという現実もあります。
俯瞰して自分を見ることの重要性
ハードワークとブラック労働の境界線は何かといえば、逃げ場があるかどうかです。精神的に追い詰められて、なおそこにしかいられない。この世界以外に自分がいることが考えられない。こういう状態になってしまっては、心身共に疲弊し、最悪の場合は死を選んでしまいます。
だから逃げてもいい、逃げ場を作るというのは、実はとても大事なことです。いまどき転職なんて特別なことでも何でもない、いつでも外に出ていいんだと認識することができるかどうか。
そのうえで、「今はこのスキルを身につけるために、多少きつくてもしょうがない」「ここは修羅場だ、しかし今が正念場だ」と思うことです。その意味で、自分を俯瞰して見る目を持つことは非常に重要です。
これは、地図を読むことに通じるものがあります。鳥の目線で俯瞰して見ることができれば、自分がいる会社の外にも世界が広がっていることがわかります。目の前の曲がり角を曲がり損なっても、次で曲がればいい。あるいはいったん戻ってみてもいい。あるいは10年先の自分を想像して、今の仕事が本当に10年後の自分にとって必要かを検証してみることもできます。
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