鳥貴族、「創業期の社名」に戻した意外すぎる理由 「横文字」社名に込めた新領域開拓の本気度

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1つは運営するブランドの拡大だ。2021年に、チキンバーガー専門店の「トリキバーガー」を出店。さらに、2023年に「やきとり大吉」を運営するダイキチシステムを買収した。「運営するブランドが鳥貴族だけでなくなったことは、社名変更の1つの要因」と、鳥貴族HDの広報は明かす。

この先も、展開するブランドを広げる可能性はある。「鶏肉を使う業態以外の展開も考えているのではないか」(別の外食業界関係者)との見方もある。となると、「事業を一層広げるには、鳥貴族という名称が窮屈になってしまう」(同)というわけだ。

新領域の2つ目が海外進出だ。今年4月には、海外での初出店を見据えてアメリカに現地法人を設立した。2024年中に3店舗を出店する計画だ。さらに、東南アジアでの出展も視野に入れる。「海外では鳥貴族という名前が馴染まない」と、鳥貴族HD広報は説明する。

当初は、創業時の社名から「エターナルサービス」が候補となった。しかし、海外では葬儀社などを連想させてしまうことから、外食産業にも通じるホスピタリティを入れることとなった。

課題は調達網の構築

海外の展開で課題となるのは、使用する食材の調達だ。国内の鳥貴族では、すべて国産の食材を使用している。一方で、海外では、日本産の食材にこだわらず、それぞれの国で調達網を構築していく考えだ。そのため、海外展開に合わせ新たな調達方法を確立する必要がある。

「海外での食材調達といっても、ケースバイケースで調達方法は異なる」と、海外展開を行う外食企業の中堅社員は話す。

現地法人を設立したうえでの直営展開の場合には、現地法人によって直接調達が行われる。フランチャイズ(FC)で展開する場合には、本部がまとめて食材を購入する国内とは異なり、海外ではFC契約した企業が調達を行う場合が多い。たとえば、アメリカや中国、マレーシアなどに出店する吉野家は、基本的にはFC展開する現地の企業が調達を行う。

鳥貴族はアメリカでは直営で展開するが、調査中の東南アジアでは直営にするかFCにするかを検討中だ。

社名変更を起爆剤に、一段成長を成し遂げることができるのか。鳥貴族の展開力が試される。

金子 弘樹 東洋経済 記者

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かねこ ひろき / Hiroki Kaneko

横浜市出身で早稲田大学政治経済学部を卒業。2023年4月東洋経済新報社入社。現在は外食業界を担当。食品ロスや排出量取引など環境問題に関心。

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