ユダヤ教の価値観を前面に打ち出すネタニヤフ氏は、宗教上の理由によるLGBTQ+の人々に対する差別も擁護しており、イスラエルの最大の支援国アメリカの価値観とは相反する。自由と平等、公正さを重視する民主主義を国家の基本理念とするアメリカ、とくにリベラルな価値観を追求する民主党にとって、宗教的価値観を前面に出されることには葛藤もある。
一方、イスラエルは 2023年6月に約5000戸の新たな入植者住宅を承認したが 、これらはパレスチナ領土内のほかの入植地と同様に、アメリカ、欧州連合(EU)、国連も国際法違反と非難している。
そして7月、イスラエルは約2000人の軍隊を派遣し、 ヨルダン川西岸のジェニン難民キャンプへの大規模な襲撃で無人機攻撃を実施し、パレスチナ人12人が死亡、50人が負傷した。
イスラエルとサウジアラビアの関係改善は凍結状態
建国以来、封印されたユダヤ主義批判は、大きな岐路に差し掛かっているように見える。背景にはロシアによるウクライナ侵攻によって、冷戦後に構築された国際秩序が崩壊しつつあることが挙げられる。さらにグローバルサウスが存在感を増し、アメリカ一強の時代が終焉しつつあることだ。
ネタニヤフ首相は9月22日、国連総会で演説し、アメリカの仲介によるサウジアラビアとの国交正常化に向けて「歴史的な和平の入り口に立っている」と意欲を示したが、その後に起こったイスラエルのガザへの激しい攻撃を経て、関係改善は凍結状態に陥っている。
イスラエルを取り巻くサウジアラビア、レバノン、ヨルダン、トルコなどは、外交よりも経済的利益を優先する傾向が強い。逆に言えば経済的メリットのないイスラエル・ハマス戦争への介入には腰が引けている。この混乱のすきにサウジなどと敵対するイランが影響力を強めることも大きな懸念材料だ。
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