税務署に狙われる「経費」アウトとセーフの境界線 マッサージ代やスーツ代はなぜダメなのか?

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確かに皆さんの住まいにもきっと常備されているティッシュ、タオル、スポンジ、ラップ……これらをビジネスの経費として計上できたらとても得した気分になりますよね。

でも、ちょっと待ってください。日用品を経費にする際も、仕事用とプライベートのものはしっかりと区別することが大切になってくるのです。

では、どういったルールでティッシュやトイレットペーパーを消耗品費として「経費」に計上できるのでしょうか。

「消耗品費」のルール

重要なのは、そのアイテムがビジネスに直結しているかどうか。

例えば、仕事でお客様をお迎えしたときのために卓上に置いておくティッシュや事務所の清掃に使うスポンジなどは、ビジネスに直結するとみなされ、経費として認められます。しかし、家庭用としての使用の場合は、当然ながら経費とは認められません。

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また、経費を計上する際には、仕事で使った分とプライベートで使った分をそれぞれしっかり分けて、仕事で使ったものだけを経費として計上するようにしましょう。

例えば、5箱セットのティッシュを300円で買って、3箱は自宅のリビングで、2箱は仕事部屋で使ったとします。この場合は、

300円÷5箱×2箱=120円

と、120円だけが経費として認められることとなります。

「そんなのいちいち区別するのは面倒だよ」と思う方もいるかもしれませんが、自宅をオフィスにしているフリーランスが経費を計上するときは、「仕事で使ったものとプライベートで使ったものをしっかり分ける」というのが大原則になっています。プライベートと仕事の線引きはしっかりとしておきましょう。

また、消耗品を経費として計上するには、

・購入金額が10万円未満であること
・使用可能期間が1年未満であること

が条件となってきます。「10万円以上の消耗品」なんて日常生活の中ではなかなかイメージがしづらいかもしれませんが、例えばパソコンのキーボードやマウスなど電子機器では該当するものもあるかと思います。ちなみに、10万円以上の消耗品を購入した場合、基本的には固定資産に計上し減価償却の対象となります。

・「お品代」としてもらった領収書はセーフ?

ここまでお話しすると、次に「レシートではなく領収書にまとめてもらって、『お品代』にしてもらえば良いじゃん! 経費の中身がわからなくなって、バレなくなる!」と安易に考える方も現れます。

これは、一見グッドアイデア賞をもらえそうな案ですが、残念ながら税務署が本気になったらすぐにバレてしまいます。

税務署はあなたの申告内容に疑いをもったらあなたの領収書を手に、その領収書を発行した店舗に直行し、お店の人にその領収書の詳細を確認することがあるのです。

「この領収書の中身、具体的に何ですか?」と問われた場合、実際にはオフィスで使う消耗品だけでなく、プライベートで使うものも一緒に買っていたことがバレてしまうと、もう逃げ場はありません。

というわけで、基本的に家でプライベート用に使う消耗品を経費計上するのはアウト。オフィス使用と家使用のものは事前にきっちり分けておきましょう。

永江 将典 公認会計士、税理士

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ながえ まさのり / Masanori Nagae

税理士業の他、4つの会社を運営する複業オーナー経営者。1980年愛知県生まれ。2003年、早稲田大学理工学部応用物理学科卒業。2003年、公認会計士試験に合格し、監査法人トーマツへ入社、一部上場企業の監査や株式公開支援など約30社を担当。社会のレールに乗せられ、自分のやりたいことが見つからないまま、気づけば嵌ってしまっていた「社畜」の沼。月間残業200時間超えの生活に疲弊し、2008年、トヨタへ転職。現在は、東京丸の内、新宿、横浜、大阪の店舗を運営するオーナー経営者となる。

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