私もこの食事会には同席させていただいたので、Sさんの様子をずっと見ていました。案の定、Sさんはまったく発言しません。
見かねた私が「『社長にガツンと言う!』って、この前言っていませんでしたっけ?」と話しかけると、こんな回答が。
「いや、今じゃないです」
いえいえ、テレビで人気の予備校講師ではありませんが、「今でしょ!」って思ってしまいました。
まるで笑い話のようですが、このSさんのような方って結構多いのです。
「いや、今だと思いますよ。この会社で、社長と直接、こんなに話ができるチャンスはかなり貴重だと思いますよ」 。私は熱心にそう伝えました。
しかし結局、Sさんは「今日はそのタイミングじゃないんで、大丈夫です」の一点張りで、社長に何も話しかけないまま、食事会はとうとう終わってしまいました。
実は、Sさんが社長に伝えたいと思っていたことは、Sさんだけでなく、Sさんが仕事で関係する範囲全体としての要望だったり、所属するチーム全体にメリットのある提案だったりした可能性があります。
しかし、Sさんがそれを社長に話すのを躊躇してしまったために、周りの人たちはその恩恵を受けることができませんでした。
「私なんかが、社長に時間を取らせては申し訳ないから」
そんな定番の言い訳は、謙虚な優等生の言葉のように聞こえます。
しかし、結局は「自分軸」でしか考えていないのかもしれません。自分が社長に意見を伝えることで、周りの人たちにも及ぼすメリットまで考えが及んでいないわけです。
そういう意味では、視座が低い考え方だといえます。
リーダーになれるのはどんな人か
元会社員で、現在はフリーランスになって活躍されている私の知人、仮にYさんとしましょう。そのYさんが新卒入社した会社の新人だったころの体験談です。
その会社では、社長主催による社員との昼食会が定期的に開催されていました。
昼食会は週1回。その参加者は、現場から無作為に選ばれた一般社員を主としたメンバーが5人から多くても7人くらい。社長室で社長と一緒に仕出し弁当の昼食を食べるというものでした。
新卒として入社間もなかったYさんは、正直なところ「社長と昼食なんて緊張するし、話しかけられたら何を答えていいかまったくわからない。メンバーに選ばれなければいいな」と考えていました。
そんなことも忘れかけていたある日、Yさんは食事会のメンバーに選ばれました。
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