円安がさらなる貿易赤字と円売りを招くカラクリ サービス収支に透ける製造業のグローバル化
ただし、国際収支統計上、製造業の海外生産移管は貿易収支悪化の一因であると同時に、サービス収支改善の一因になっている部分もある。それが産業財産権等使用料であり、同項目には日本企業が海外子会社等から受け取るロイヤルティーなどが計上される。
日本の「その他サービス収支」において唯一、黒字を記録する知的財産権等使用料も、その実態は産業財産権等使用料の黒字に支えられている。
近年、海外企業から供給される音楽や動画の定額課金サービスを受けて著作権等使用料の赤字が増勢傾向にあるものの、産業財産権等使用料の黒字が多額に上っているため、これら2本から構成される知的財産権等使用料全体では黒字が維持される構図にある。
製造業の海外生産移管は経常収支上、赤字拡大と黒字拡大の二面性を有する。
ロイヤルティー収入は増加
2023年8月公表の日銀レビュー『国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化』ではサービス収支を軸に日本経済が経験しているさまざまな構造変化を分析しているが、そこでは産業財産権等使用料の黒字が増勢傾向にあることも注目されている。
日本企業が海外生産移管を進めるほど、国内企業が海外から受け取るロイヤルティー(産業財産権等使用料)は増えるので、例えば自動車の海外生産台数の動きなどと安定した関係を見いだすことができる。
ちなみに日本の貿易収支が慢性的な赤字傾向に陥る直前の2010年の貿易収支は約6.6兆円の黒字だった。同じ年、産業財産権の受取は約2.2兆円だった。これが2021年の産業財産権の受取は約4.6兆円と倍以上に膨らんでいる。
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