円安を見誤る「経常黒字国」「最大の債権国」の仮面 インバウンド黒字とデジタル赤字、拮抗の前途
資源高が落ち着き、インバウンドが復活したことで2023年は経常黒字が前年のほぼ倍となったが、「統計上の黒字」に安堵してはいられない。
2月8日、財務省が発表した2023年の国際収支統計を基に、円相場の需給環境について現状を整理しておきたい。
まず、ヘッドラインとなる経常収支は、20兆6295億円の黒字と2年ぶりに20兆円台に復帰した。黒字額としては前年比9兆9151億円の増加であり、その増加幅のほとんどは貿易収支赤字が半減以下(前年比マイナス9兆1146億円)に改善したことで説明できる。
さらに言えば、貿易収支赤字の減少は、言うまでもなく資源高の一服で輸入が大幅減少(前年比マイナス7兆6092億円)したことで説明可能だ。
資源高で輸入減、インバウンド解禁で旅行収支増
貿易収支以外では、サービス収支赤字が大きく減少(前年比マイナス2兆3262億円)したことも経常収支黒字の押し上げに寄与している。
これは旅行収支黒字が3兆4037億円と、2019年に記録した過去最高の黒字(2兆7023億円)を大幅に更新したことの結果である。2022年の旅行収支黒字は6242億円だったので、サービス収支赤字の改善は基本的に旅行収支黒字の増加で説明できる。
旅行収支にここまでの段差が生じているのは、2023年の途中(新型コロナウイルス感染症の5類変更が行われた5月)まで入国における水際対策が残っていたためだ。今後は3兆円台の旅行収支黒字が前提になるだろう。
このように、2023年の経常収支黒字は基本的に貿易サービス収支赤字が大きく減少したことと表裏一体である。
ここまでが一般的な報道に即した情報整理になる。
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