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為替介入で歪んだ日本経済、ツケを払う局面に 当局が円高を阻止する期待から変革が起きず

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過去の円高への介入で日本経済は課題を抱えてしまった。そのツケを払う局面にきた。

市場への過度な介入で日本経済は健全な成長機会を失ったようだ(写真:Noriko Hayashi/The New York Times)

円安圧力が続く中で、財務省だけでなく、岸田首相までが円安の動きを牽制し始めた。基軸通貨国でもない日本が、貿易・サービス収支が赤字で、対外直接投資も依然として高水準、所得収支の黒字の多くは海外で再投資されている中、実質金利を大幅マイナスに維持しているのであるから、円が売られるのは自然な流れだ。

貿易・サービス収支黒字の63%も吸収した為替介入

円を売っているのは輸入企業や海外に出ていく日本企業、そしてアメリカ企業からサービスを購入したり、NISAを通じて外国株投信に投資したりする日本の個人だ。逆にこんな状態で円を買うのは、円買い介入を期待した投機筋くらいだろう。

市場において、短期的な取引を行う主体は、市場に流動性を与え、マーケットを安定化させる。仮に、今円を売っているのが投機筋であったとすれば、それは今後実需の円売りが強まったとき、逆に利食いのために円を買う側に回ってくれる。つまり、短期的な取引を行う主体は、ファンダメンタルズに基づいた動きを先回りするので、円売りの動きを早めに徐々につくり出してくれていることになる。

もし世の中に実需しかなければ、円売りの動きが一度に出ても、円を買う人がおらず、パニック的な円売りになる可能性がある。

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