ジャニーズ「当事者の会」要請、妥当か不当かの拙速 被害者救済のあり方と私たちの目線

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今回の件に限らず性加害問題は、私たち1人ひとりが発生を防ぎ、被害者に寄り添うなど、自分事として考えていくべきものであることは間違いありません。ジャニー喜多川氏の性加害問題についても、「自分は第三者だけど、『こうあるべき』と言いたい」と思うのは当然でしょう。

しかし、それでも被害者救済の話し合いすら進んでいない現段階では、一部を切り取って「要望は不当」などと決めつけて批判するのは、早すぎるような気がするのです。

「法を超えた救済の限界」の指摘も

かつて性被害者の女性に取材したことがありますが、加害者に対する怒り、悲しみ、諦め、虚しさなどの感情は、こちらの想像をはるかに超えるものがありました。性加害そのものだけでなく、周囲の人々や社会から理解されないであろう不信感や、長年話せなかったことで、そのネガティブな感情はふくらんでいったようです。

今回の要請書や、それに対する世間の反応をメディアがあまり報じていないのは、そんな被害者のつらさがわかっているから、というところもあるのでしょうか。やや厳しい見方をすれば、多くのメディアから「センシティブな問題なので扱うことをやめた」という保守的な姿勢もうかがえます。

それ以上に感心できないのは、要請書の内容だけをストレートニュースで報じて、人々の批判をあおるようなスタンスの記事が多いこと。もし「行きすぎ」たところがあったとしても、「人々の批判を集めて誹謗中傷につなげるような流れをメディアが作っている」としたら大いに問題ありと言わざるをえないでしょう。

また、この要請書を受けて、「法を超えた救済の限界」を指摘する声がにわかに増えています。

「やはり法律に基づいて補償すべき」
「公正な賠償を望むなら法律に則って刑事なり民事なりで解決するべき」
「もう、当事者同士の話し合いでは解決出来ないでしょう。裁判所に任せたほうがいい!」
「この被害者たちの言い分を見てるとこれはもう裁判できちんと司法の判断を仰いだほうがよいと思う」
「スマイルアップは正式に裁判に持ち込んで終わらせたほうがいいと思う」

とくに「当事者の会の要請が行きすぎている」と感じた人々から、「そんなに折り合いがつかないのなら、法に基づいて落としどころを決めるべき」という声が上がっているのです。しかし、時効があるほか、思うような救済がされず、被害者の不満を募らせるだけでしょう。

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