コミュ力より「安パイな存在」実は仕事で有利な訳 人は「どんな人を周りに紹介するか」考えてみる

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相手は紹介者の顔を立てようとしますから、その場で責めるようなことはしませんし、意味のない紹介だったと感じていても、「すてきな人を紹介をしてくれてありがとうございます」と言って帰ります。優秀な人ほど合理的ですし、ムダなリスクは避けますから、自分の本音を悟られないように礼をつくします。

このような話は、経営者やフリーランスの人なら比較的共感できる場面だと思います。

一方、会社員の人はどうでしょう。とくにこの場面が「上司に連れていかれた会食」だとどうでしょうか。新たに担当するクライアントができたとき、前任者や上司と共に会食する場面はよくあります。

会社員のイチ担当ですから「自分が任命されたことに、どこまでの意思があったのか」も定かではありませんし、相手が「自分にどこまで期待してくれるか」もわかりません。ですから、その会食の場は「あくまで顔合わせに過ぎないし、その後もイチ担当として仕事をこなせばいい」。そう考えても仕方ありません。

しかし、「紹介者に責任があり、紹介される側にも責任がある」という本質的な構造は同じです。むしろ、そういう無機質で日常的な会食の場面でこそ、「双方の信用のうえでこの場がある」という意識で臨むと一目置かれます。なぜなら、単純にそういうスタンスで紹介を受けている会社員がほとんどいないからです。

これは会社のためではありません。自分自身のためです。「組織から精神的に独立すること」は、自由を手に入れるために必要です。組織で受ける紹介を、そのままイチ組織人として受けるのではなく、「個人の人格で受けようとする意識」はその第一歩になります。

やや固い話になってしまったので、少し打算的な言い方もしておきます。

「紹介され力」があると営業コストがかかりません。新たなビジネスやパートナーを作るとき、ほとんどの場合は営業活動が必要になります。

営業は、まず適した相手を探すところから始まりますが、見つかっても会ってくれるかわかりません。会えたとしても提案に興味を持ってくれるかわかりませんし、最終的にパートナーになってくれるかわかりません。

紹介はこの工程のうち、ほとんどの部分は省くことができます。お金もかかりませんし労力も少なくすみます。「自分のことを知らない無信用の状態」で人と話すことはストレスもかかります。とにかくいろんな部分でコスパがいいのです。

安易に紹介を求めないこと

また、「紹介され力」を勘違いして「紹介してほしい」と安易に頼む人がいます。それは「紹介者責任」を理解していない行いです。

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たとえば、「友人でもない、一度仕事で関わったことがあるくらいの人」から数年ぶりに連絡が来て「〇〇さんを紹介してほしい」と突然言われたらどう感じるでしょうか。あまり紹介したいとは思いませんよね。

仮に自分がよくても、相手に説明のしようがありません。紹介は「人の信用を丸ごと基盤に、さらなるチャンスを得ること」です。これはあまり言語化されてない、見落とされがちなマナーともいえます。

「紹介され力」は「紹介したいと思わせる力」です。紹介したいと思わせるのは難易度が高いことのように思われがちですがそうでもありません。「紹介しても大丈夫な人、安パイな人」になるように心がけるだけです。「紹介され力」のある人は、人を紹介するのも上手になります。それはビジネスマッチングのスキルそのものです。「人の紹介には責任がある」と認識することで、結果的にコスパ良く自分のビジネスにつなげ、組織からの精神的独立につなげていくこと、それが「紹介され力」というスキルです。 

高瀬 敦也 コンテンツプロデューサー

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たかせ あつや / Atsuya Takase

株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO。1998年フジテレビ入社、営業局にてスポットセールスプランニングに従事。その後、編成制作局にて「逃走中」「戦闘中」「Numer0n(ヌメロン)」など企画性の高い番組を多数企画。「逃走中」「戦闘中」ではニンテンドー3DSのゲームもプロデュースし、シリーズ累計100万本を超えるセールスを達成。「Numer0n」ではアプリ化を前提とした企画としてゲーム内容からデザインし、スマートフォンアプリは350万ダウンロードを記録。また、DJ活動も行い、自身もソロアルバム(CD)を全国リリース。フジテレビを退社した現在、さまざまな業種の新事業企画、新商品企画、広告プロモーション戦略立案など、幅広いコンテンツプロデュース・コンサルティングを行っている。

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