世間で信じられている「嘘のサイン」大いなる誤解 間違った解釈ですれ違いをうまないために
夫が出張に行くと言った日を記録しておき、それぞれの日についてどんな出張か聞きます。ある特定の日だけマニピュレーターが多く生じていたら怪しい。投資案件が複数ある中で、特定の案件だけマニピュレーターが多く生じていたら怪しい。そんなふうに使えるかもしれません。
嘘のサインの最新科学、微表情
ところで、クイズで挙げたサイン以外にも嘘のサインはさまざまにわかっています。注目したいのが、微表情です。抑制された感情が抑制し切れず表情に漏洩する現象です。顔の一部分、かつ、0.5秒ほどしか生じない表情です。
微表情は、1960年代に自殺願望者の表情から発見され、現在に至るまで嘘との関係が検証されています。例えば、マツモトおよびファン(2018)の研究によれば、微表情の有無から70%強の精度で真偽を区別できることがわかっています。真偽判定の精度が平均54%であることを考えると、なかなかの成績です。
それでも、微表情は、あくまでも嘘のサインです。真実を述べている者に比べ、嘘をついている者に相対的に多く生じる現象というわけですので、マニピュレーター同様、コンビネーションの中で捉える、あるいは、状況を加味する工夫は大切です。
しかし、こうした工夫をしなくても微表情には利点があります。微表情に気づくことができれば、嘘をついているかどうかはわからないものの、少なくとも何らかの感情を抑制していることがわかります。
特徴的な微表情の筋肉の動きから、幸福・軽蔑・嫌悪・怒り・悲しみ・驚き・恐怖・認知的負担などがわかります。例えば、①鼻の周りにしわを寄せる微表情が表れれば、これは嫌悪感情の抑制だとわかります。「絶対儲かります」とポジティブな発言をしながら、嫌悪微表情というネガティブ感情が表れれば、怪しさ全開です。
②額が強張り、目が見開かれる微表情が表れれば、これは恐怖感情の抑制だとわかります。「不正には関わっていない」と恐怖の微表情を浮かべていた経営者を目の前にした経験がありましたが、後に不正に手を染めていたことがわかりました。③唇を一文字に結ぶ微表情が表れれば、これは認知的負担を抱えている。頭がいっぱいいっぱいな状態にいることがわかります。答えられるはずの質問に認知的負担表情が表れたら要注意です。
とはいえ、微表情を検知しても嘘とは即断せず、「なぜ感情を抑制したのだろう」と考え、その感情が抑制された理由を注意深く探ることが大切です。その理由が納得いかない場合、嘘をついている可能性が高まるでしょう。
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