納期に間に合わないが「残業はしない」はアリ? 「残業せずに帰るのは"当然の権利"」なのか

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基準が曖昧だと、どこに問題があるかがわからない。問題の所在を隠したい人には都合がいいが、それだといつまで経っても改善されないだろう。

ちなみに、採用基準が曖昧な会社は、人事評価も同じように曖昧なケースが多い。「彼女は活躍している」「彼は当事者意識に欠ける」といった属人的な視点で評価をしてしまう。

採用における評価も、入社後の通年評価も同じ。逃げることなく、細かく評価基準を設けて、常にアップデートをし続けよう。そうしないと、いい人財を採用できないし、入社しても上長からの評価に納得することがないだろう。

「採用したら何とかなる」の大いなる誤解

2つ目の勘違いが、「採用したら何とかなる」だ。多くの人が、この考え方を持っているはず。正直なところ、私自身もつい最近までそう信じていた。

「今は物足りないが、入社して職場で揉まれたら何とかなる」

私が採用した部下の中にも、そのような「掘り出し物」と言えるような人がたくさんいる。そんな過去の成功体験があるため、せっかくの「掘り出し物かもしれない人財」を、採用基準に満たないからといって不合格にしていいのか。強い葛藤を覚えるのだ。

しかし今の時代に、この「結果オーライ」の姿勢はいただけない。

昔なら多少のアンマッチがあっても、お互いが我慢して仕事をしていくうちに、フィットしていくことが多かった。

「入社してすぐに辞めようと思ってたんですが、気付いたら10年経ってました」

「俺もお前はすぐに辞めると思ったけど、よく頑張ったよ」

このように、長い年月を経て「採用のアンマッチ」が笑い話になることも多い。

ところが今は、超売り手市場だ。

「前提条件が違う」と判断した瞬間に、もっと条件の合う転職先を若者は見つけようとするだろう。未曽有の採用難の時代だ。需要はいくらでもある。

このように、昨今「働きやすさ」を前面に押し出した採用活動をして失敗する例が増えている。入社後に教育しなおすのもいいが、「前提条件が違う」「騙された」とクレームをつけられる可能性もある。十分に気を付けたほうがいい。

そのため採用戦略や採用プロセスのアップデートは苦労を惜しまず、丁寧にやっていくことだ。採用段階から相手を教育・啓蒙するという意識も必要かもしれない。

横山 信弘 経営コラムニスト

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よこやま のぶひろ / Nobuhiro Yokoyama

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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