「学校80校をリノベ」台湾がデザインを重視する訳 政府関連機関が「法廷の空間デザイン」まで手掛ける
──コピーできるようにモジュール化しているのですね。
法廷の空間デザインのほかにも、保健所の空間デザイン、消化器など消防設備のデザインも実施していますが、それらはさまざまなデザイン資料(ガイドラインや指定フォントデータも含む)をオープンソース化してインターネット上で誰でもダウンロードできるようにしています。こうすることで、例えば消化器の製造業者はこのデザイン資料に従って新しいデザインの消化器を生産することができるので、導入コストが低く済みます。こうすることで、新しいデザインをスピーディーに社会に広げることができるというわけです。
「台湾デザインのいま」を表す3つのキーワード
──「台湾デザインのいま」について、キーワードを挙げるとすれば、どのようなものがありますか。
3つあると思っています。まず、台湾のデザインは今とてもチャンスに恵まれているということです。多様性に満ちて、イノベーションが歓迎される台湾の環境は、デザインにとって追い風です。
次に、サステナブルです。島国である台湾は社会の環境に対する意識が非常に高く、デザイン業界がサステナブルについて理解し、デザインに取り入れています。台湾のスタートアップ企業「Miniwiz」によって開発された世界初のオフグリッド型廃棄物リサイクルシステム「Trashpresso(トラッシュプレッソ)」が2021年度の「World Design Impact Prize」でグランプリを受賞するなど、世界からも高く評価されています。
最後に、台湾の公務組織は変化に対して柔軟であることが挙げられます。公共政策などにデザインが取り入れられ、そのことに対してFacebookやInstagramなどで寄せられる民衆からのフィードバックが、公務員たちにとって励みになっているのです。
──その中でデザイン研究院は中心的な役割を担っていますね。
やりたいことはたくさんありますし、優秀な人材が集まってきてくれています。
今年のインターン生の募集には、26名の枠に国内外から800人以上の申し込みがありました。うちは週5日のうち2日はオフィスに出勤しなくてもよい制度を採用しているので、そんな働き方が支持されているのかもしれません。小さい子どもがいるスタッフも、仕事とのバランスを取りながら働くことができるので、メリットを感じてくれているようです。
これまでオフィスとは仕事をするための場所でしたが、今は共同学習など、意味が変わってきましたね。コロナ前にオフィスのインターネット速度を強化したので、オフィスからライブ配信もできます。
メンバーは全体で180名程度、来年には200名にもなろうとしています。スタッフの半分はデザインのバックグラウンドがありますが、半分は法律やビジネス、テック系の出身です。院に昇格したタイミングで、組織内に研究開発部門を設けました。
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