「サステナブルデザイン」は競争力強化の有効手段だ 全ての経営資源投入できれば日本の未来は明るい

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新しい発展と成長を支えるためにデザインの力が必要だ (イラスト:市村譲)

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学界とビジネスの現場をつなぐ本格的経営誌、『一橋ビジネスレビュー』。6月19日発売の2024年夏号は、「サステナブルデザイン」を特集しています。
大量生産・大量消費から、限られた資源を有効活用し、持続可能な未来へ。新素材やAIなどのテクノロジーの進化も含めて議論します。ここでは、米倉誠一郎編集委員長による特集内に掲載している論文のポイントを解説します。
一橋ビジネスレビュー 2024年SUM.72巻1号: サステナブルデザイン
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産業革命以降、人類が追求し続けた大量生産・大量販売・大量消費・大量廃棄という経済パラダイムが限界に達している。限られた地球資源を丁寧に使いながら環境保全と持続的成長を両立させる新しいモデルが各分野で求められているのである。

特集では、そうした新しいパラダイムを支えるデザインの力に迫る。それは、単に意匠という意味のデザインにとどまらない。環境負荷を最小限に抑えながら、社会全体のウェルビーイングを最大化しつつ、経済に新しい成長をもたらすという「社会経済活動全体のデザイン」をも含むものなのである。

CO2排出を念頭に置いたサステナブルデザインが必要

たとえば、製造業においては、サステナブルなマテリアルを効果的かつ効率的に利用し、生産工程を簡素化して脱炭素化を推進、さらには当初から廃棄を最小化するようなデザインを追求することである。また、環境負荷の高い建設業や街づくりにおいても、建設・建築時におけるCO2排出とライフサイクルにおける維持運営にかかるCO2排出を念頭に置いたライフサイクル全体のサステナブルデザインが必要である。

アパレル産業においてデザインは最も重要な要素であり、まさにファッションという言葉が意味するように「流行」や「トレンド」を人為的に創り出すことで、拡大再生産を可能としてきた。特にファストファッションを担う巨大アパレル企業は独自の生産小売モデルを構築し、素早いファッションの回転率を追求してきた。

近年になって、大量廃棄を前提としたこのモデルに批判が集まり、リサイクルなどが始まっているが、そもそもこれまでの「ファッションデザイン」と、これからの「サステナブルデザイン」の相剋にはまだ解がない。

一方、サステナブルデザインという大変革には、新たなテクノロジーの力が欠かせない。石油由来の化学繊維から自然界に存在するマテリアルを使った繊維、オンデマンド型3Dプリンター、IoTやAIの登場も持続可能な成長を支える技術であり、それらを前提としたサステナブルデザインの可能性も、本特集では触れられている。

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