「サステナブルデザイン」は競争力強化の有効手段だ 全ての経営資源投入できれば日本の未来は明るい
ファラ・タライエ(NewNormDesign CEO兼ヘッドアーキテクト)
サステナブルデザイナーとして長く建設・建築の仕事に携わってきた著者は、建設や建築におけるCO2排出や環境破壊が深刻であることを前提に、サステナブルデザインの具体的な手法や事例を紹介する。特に、人間中心のデザインから、人間も地球の一部にすぎないことを前提とした「地球中心のデザイン」への移行を、7つのコアバリューの実践から提案する。
それは、①サステナブルなマテリアルの使用、②調達のしやすさと適切な輸送手段、③再生可能エネルギーの使用、④エコロジカル(環境保全・自然調和)な価値の追求、⑤健康とウェルネスの重視、⑥自然エネルギーの最大活用(パッシブデザイン)、⑦長期的なライフサイクルコストの算定、である。
本論文の定義するサステナブルデザインとは「地球を守り、私たちが生きていく環境を保全することがサステナビリティだとすれば、それを実現するための建築物や商品、サービスをデザイン・設計すること」である。さらに、「それは手法であると同時に、設計思想・設計哲学でもある」とデザイン設計の背後にある思想性を強調している。
ただし著者は、サステナブルデザインを空虚な理想論ではなく、実際の社会課題解決の手法に結びつけることを忘れていない。サステナブルデザインの影響を社会面・経済面・環境面にわたって検証し、それが環境ばかりでなく、人類の幸福やコミュニティの復活、さらにはウェルビーイングの向上につながると説いている。こうしたことの実践は決して易しくはない。この「制約」こそがクリエイティビティイノベーションの源泉なのである。
サステナブルファッションの在り方に迫る
水野大二郎(京都工芸繊維大学未来デザイン・工学機構教授)
水野論文は、「形容矛盾」ともいえる「サステナブルファッション」のあり方に迫っている。ファッションとはもともと流行を指す言葉であり、流行の裏には「廃れ」がある。流行と廃れを経済価値にするには「陳腐化」が前提となる。
したがって、持続可能性を意味する「サステナブル」と流行り廃りを前提とする「ファッション」を統合した「サステナブルファッション」という言葉は「蒼白の赤面した顔」と同義に響くからである。
この難題に挑んだ本論文では、「前のシーズンで良いとされた商品の意味は剥奪され、次のシーズンでは新たな商品の意味や無意味に美的価値をつけることが目論見とされてきた」美的資本主義におけるサステナビリティのあり方を模索する。
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