「サステナブルデザイン」は競争力強化の有効手段だ 全ての経営資源投入できれば日本の未来は明るい

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特に、21世紀初頭に台頭したファストファッションでは、「理想の陳腐化」が加速度的に促され、ファッション業界のビジネスモデルの多くは資源の使い捨てを前提とした「採取主義的となった」とする。

これに対して、海外や国内におけるサステナブルファッションの有効事例が紹介される。しかし、ファッションには「欲望を満たせば、さらに欲望が強化される」という業界にとっても個人にとってもきわめて依存性の高い特性がある。

したがって、ファッション業界のサステナビリティにおいては必然的に発生する故繊維(一般家庭および繊維産業から出る繊維くずの総称)を、静脈産業の出口戦略として高付加価値化することが現実的な1つの解であることが示される。故繊維の高付加価値化に関しては、近年成長を続ける二次流通市場やインターネットを通じたP2P市場にも一定の活路があるという。再販価値(リセールバリュー)を高めるような商品デザインが促進されるからである。

都市レベルでのサステナブルデザインの展望

日本型サーキュラーシティのトータルデザイン
田中浩也(慶應義塾大学環境情報学部教授)

田中論文は、循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行のなかで、企業レベルではなく「都市レベル」でのサステナブルデザインの展望を紹介している。本論文の冒頭で、天然資源を75%以上消費、廃棄物排出の50%以上、CO2排出の60%を占める「都市」こそが最大の環境負荷要因であることが紹介される。

したがって、都市を循環経済に移行させることが環境・社会・経済に大きなインパクトを与えるとして、都市、なかでも「中都市(約10万~20万人規模)」の循環経済に果たす役割の重要性が指摘される。

本論文が定義する循環型都市(サーキュラーシティ)とは、「産学官民の連携・共創により、都市空間の全域において線形経済から循環経済への公正な移行を実現し、SDGsに沿った形で脱炭素、生物多様性の保全・再生、社会的不平等を是正することで、最終的に、市民のウェルビーイングや新たなライフスタイルを創造しようとする都市」である。

さらに、中都市には「自治体、企業、市民、研究コミュニティ(大学)が互いの役割を尊重しながら緩やかに連携し、サーキュラーシティへ向けた包括的・体系的な移行を実践するモデルになりうる」としている。そこで、著者らが鎌倉で取り組んでいる拠点活動を事例に、日本型サーキュラーシティの可能性を引き出そうとしているのである。

市民が意識的・無意識的にリサイクルに参加する機会を持つと、自己効力感、地域幸福度、まちへの愛着を高めていくという実証結果から、循環の「見える化」「触れる化」の重要性が説かれている。「行き先や出口が透明化されていない『資源回収』は、結果的に参加者(循環者)からの疑念や不信を招く」からである。

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