「学校80校をリノベ」台湾がデザインを重視する訳 政府関連機関が「法廷の空間デザイン」まで手掛ける
──「これまで政府案件はやりたくないと思っていたけれど、デザイン研究院が間に入ってくれるようになってから、参加するようになった」というデザイナーも多いです。
私たちも以前は商品やブランドの価値を高めることにフォーカスしていましたが、院に昇格してからは、自分たちがクライアントとデザイナーたちとをつなぐプラットフォームになり、テクノロジーやビジネス戦略、法律など、さまざまな領域を超えて協業しながら「価値を創造すること」がミッションになりました。
台湾でデザインが重視されるようになった要因
──どうして台湾ではデザインが重視されるようになったのでしょうか?
シニア世代は自分たちが競争社会の中で生き残ること、稼ぐことを重視してきましたが、今の若い世代は自分たちの生活や、公共に対する関心が非常に高いというのも1つの要因でしょう。政府機関も、企業やブランドも、デザインを取り入れることで彼らにアピールすることができます。今では公務員たちの中にもデザイン思考が浸透してきました。
台湾の総統府が主催し、デジタル大臣のオードリー・タンさんが招集人を務める「総統杯ハッカソン」でも、5回目となる2022年度にCIを作ろうという提案をさせていただき、実現しました。表彰式典で総統が手渡すトロフィーも、黒一色にしたんですよ。この影響は大きいです。各省庁も、「総統府がこんなふうにするのなら、自分たちにもできる」と思ったことでしょう。
──本当にたくさんのプロジェクトを手掛けられていますが、いくつか日本に向けてご紹介いただけますか。
まず、日本から反響をいただくことが多いのは「學美・美學 キャンパス美学デザイン実践計画」です。公募で選ばれた小・中・高、専門学校のキャンパスをデザイナーたちとともにリノベーションするもので、2019年から始めて2022年末までに台湾全土におよそ80校ほどが完了する予定です。教室、食事場所、廊下、施設サイン、清掃道具の収納や外壁、電線など、その対象はさまざまです。
1校あたりの予算が100万元以下で実施できる小規模なプロジェクトでありながら、教育という未来への投資効果が大きく期待できるため非常に好評で、毎年20校ほどの公募枠に、200を超える学校からのエントリーがあります。デザイナーが母校や地元の学校を手掛ける事例も増え、手応えを感じています。
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