貴重な好事例「宇都宮LRT」各方面から注目の訳 公共交通「リ・デザイン」の先端がここにある

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JR宇都宮駅東側のLRT整備費は、総額約684億円。このうち約半分の約342億円が国の支援、栃木県の支援(建設時)が約20億円。残りのうち、宇都宮市と芳賀町の予算がそれぞれの区間分に応じて約282億円と約41億円を負担している。

宇都宮市の約282億円は20年のローンで返済するため、年間の負担は最大約13億円となる。市債償還金額である18億円から、県の支援金(償還時)約2億円と、交付税措置額(市債充当率90%、償還期間20年想定)の約3億円を差し引き、約13億円という計算だ。

この約13億円は、宇都宮市の予算規模約2000億円の0.7%であり、佐藤市長はほかの支出と比較して妥当性を強調した。

なお、2021年には概算事業費を約458億円から約684億円へと見直している。これは、「実際に事業用地を買収後に事業費を整備した結果」と、宇都宮市では説明している。

沿線の大型商業施設「ベルモール」はライトライン」停留場からアクセスしやすい立地にある(筆者撮影)
沿線の大型商業施設「ベルモール」はライトライン停留場からアクセスしやすい立地にある(筆者撮影)

LRT建設が決まったことで、市にはどんな変化があったのだろうか。 

まず、JR宇都宮駅東側整備区間の人口は、平成24年から令和3年にかけて約4100人増加した。市全体では、平成29年をピークに人口減少が続いている中での、増加である。

また、マンションや商業ビルなど、高層建築物の建設確認申請件数も、ライトライン沿線のJR宇都宮駅東側で増加しているというグラフが示されている。

こうした地域への投資効果によって、JR宇都宮駅東側の地価は、平成24年と比べて令和4年は商業地で約2%、住宅地が約5%上昇した。宇都宮市全体では、それぞれ約8%・約10%下落しており、LRTの効果がはっきりと現れていると宇都宮市は見ている。

コンパクトシティで目指す街のあり方

ここからは前述のNCCについて深掘りしていく。コンパクトシティという街づくりの概念は、日本でも近年、さまざまな地域で導入を検討、あるいは実際に導入するケースが出てきている。

宇都宮市は「新しいまちのくらし、スーパースマートシティ」を掲げる(筆者撮影)
宇都宮市は「新しいまちのくらし、スーパースマートシティ」を掲げる(筆者撮影)

日本は高度経済成長期を経て各都市で街が郊外に拡大したが、2010年代半ば以降になると、少子高齢化や就業人口の減少に伴い、住民からは「街をコンパクトに変えるほうが、住みやすくなるのではないか」、行政からは「予算の支出を抑えた有効的な街づくりが可能になるのではないか」という発想が出てきた。

コンパクトシティでは、人の生活に関わる就業、医療、教育、買い物、行政などの施設を居住エリアの中に組み込む、といった考え方を基本としている。

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