貴重な好事例「宇都宮LRT」各方面から注目の訳 公共交通「リ・デザイン」の先端がここにある

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各種の取り組みを包括して見ると、ライトラインは単なる新交通システムではなく、次世代の街づくりに向けた「街の背骨」、または「街の血管」として位置付けられていることがわかる。

近年、全国各地でいわゆるMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の実証実験が数多く行われてきたが、その多くは「実証のための実証」にとどまり、社会実装されないケースが目立つ。

宇都宮はライトラインを次世代の街づくりの主軸として主導する(筆者撮影)
宇都宮はライトラインを次世代の街づくりの主軸として主導する(筆者撮影)

そうした中で、宇都宮のNCCは「MaaS構想が実現したステージ」として見れば成功事例といえるのではないだろうか。

国土交通省では2023年6月30日、地域公共交通を抜本的に見直す「リ・デザイン」に関して、「交通政策審議会 交通体系分科会 地域公共交通部会」の最終とりまとめを公表した。

これを受けて、同省では同年9月6日に「デジタル田園都市国家構想実現会議」のもとで、第1回「地域の公共交通リ・デザイン実現会議」を開催。配布資料の中に、宇都宮市の事例も紹介されている。

もう1つの狙い「渋滞緩和」はどうなる?

宇都宮LRT構想には、1990年代から課題となっていた渋滞を緩和させる狙いもある。

中でも、ホンダ関連企業などに通う人たちの通勤渋滞への影響が考えられてきた。ホンダはこれまで、通勤専用バスを仕立てるなどしてきたが、今回のライトライン開業によって新しい方針を打ち出した。

本田技研工業の広報担当部署に事実確認をしたところ、ライトライン開業によりJR宇都宮駅から各事業所に、公共交通機関で通勤が可能となった。そのため、これまでのJR宇都宮駅~事業所間を走らせていた通勤専用バスを廃止したという。

通勤時間帯の渋滞解消による地域への貢献に加え、移動をライトラインに切り替えることでの脱炭素推進も専用バス廃止の理由だと説明する。

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従来の通勤専用バスの利用者数は、1日約1200人。大多数が新幹線通勤者であったことから、「そのほぼ全員がライトライン通勤にシフトするもの」と、ホンダでは見ている。

また、通勤手当は自家用車とライトラインを含む公共交通機関利用の場合にも支給しており、公共交通機関の利用を推奨する形となっている。

宇都宮市は今後、ライトライン導入後の渋滞緩和の実績も公開するだろう。地域公共交通のリ・デザインの最先端を走る宇都宮市。そこから、日本の未来を見出いすさまざまなヒントが生まれることを大いに期待したい。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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