貴重な好事例「宇都宮LRT」各方面から注目の訳 公共交通「リ・デザイン」の先端がここにある

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会議のオープニングセッションの特別講演には、宇都宮市の佐藤栄一市長が登壇し、約45分間にわたり、「HELLO, NEW CITY. ~新しいまちの暮らし スーパースマートシティ うつのみや 始動~」という題目で講演した。

JCOMMのオープニングセッションで挨拶する、宇都宮市の佐藤栄一市長(筆者撮影)
JCOMMのオープニングセッションで挨拶する、宇都宮市の佐藤栄一市長(筆者撮影)

この講演では、まず世界、日本、そして宇都宮市の人口現状と今後の課題、それにともなう宇都宮市での少子化対策や、定住人口の増加を図る施策などを紹介。

街づくりの基本政策として、佐藤市長が「私の造語」だと言う「NCC(ネットワーク型コンパクトシティ)」を説明した。NCCは「地域共生社会、地域経済循環社会、そして脱炭素社会の3要素を『人』と『デジタル技術』を原動力に発展を続ける街づくり」と定義される。

宇都宮市の「足掛け20年」

NCCという表現は、佐藤市長の就任2期目となった2008年に、第5次宇都宮総合計画における「目指すべき都市の姿」として位置付けたものだ。その中にLRTも含まれるのだが、「LRT事業のあゆみ」のスタート地点は1992年の第2回宇都宮都市圏パーソントリップ調査にまでさかのぼるという。

翌1993年には、宇都宮市街地開発組合(県と市)において、交通渋滞の解消と交通アクセス強化のため、新しい軌道交通システムの導入が検討された。

そこから数えると、2023年のライトライン開業まで足掛け30年を要したことになる。

とはいえ、実際に具体的な計画が進んだのは、佐藤市長就任1期目の2004年。宇都宮市が主体となり、まちづくりと交通、LRTに関するオープンハウスや懇親会等の開催からであり、開業まで「足掛け20年」という認識を佐藤市長は示した。

鉄道・バス・タクシー・ライトラインで公共交通のリ・デザインを図った(筆者撮影)
鉄道・バス・タクシー・ライトラインで公共交通のリ・デザインを図った(筆者撮影)

こうしたLRT開業に向けた20年間、宇都宮議会や市民の間でLRT建設については「賛否両論があった」と、佐藤市長がこれまでの流れを振り返る。

宇都宮LRTについてはさまざまな意見を持つ人がいるが、筆者はこれまでそうした多方面の人々と膝を突き合せた議論をともなう、定常的な取材はしていない。そのため、本稿では過去の各種報道を引き合いに出した形での記事化は、行わないことが妥当であるものと考える。

今回の講演で宇都宮市が示した資料に基づく実績を示すにとどめ、論点を「街づくりの方法論」に置くこととする。

市が示した事業予算と実績は次の通りだ。

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