松本大「上場したら一生横綱っておかしくない?」 株価の上昇が多くの日本人を幸福にしない理由

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いずれにしても、PBR1倍割れ企業に対して、その水準を引き上げるための具体的な施策の開示を求めるようにしたことは、今後の株価上昇につながっていくと考えられます。

コンビニで購入できるようになるといい

株価上昇が一部の金持ち優遇ではなく、大勢の日本人の幸せにつなげるためには、誰でも簡単に株式投資できる環境を整える必要があります。

「いやいや、もうけっこう投資しやすい環境は整っているでしょう」と、証券業界で働いている人や、投資家としてけっこうキャリアを積んでいる方は言うと思います。

確かに、投資信託の積立投資なら、毎月1000円からできるようになりましたし、1株投資も可能です。わざわざ証券会社の店頭まで出向かなくても、インターネットで簡単に口座を開設できるようにもなりました。

いまから30年前に比べれば、誰でも簡単に投資できる時代になったと思います。

ただ、そのように思えるのは、恐らく投資が身近な人たちだからではないでしょうか。証券会社をはじめとする金融業界で働いていれば、投資は日常業務のひとつですし、昔から投資をしている人たちからすれば、いまの環境は誰でも簡単に投資できると感じているはずです。

しかし、その一方で投資をしていない人が大勢いるのも事実です。

長い目で考えると、やはり大勢の人たちが少しずつでもいいから、株式や投資信託を持つことが大事です。「ああ、株価が上がってよかった」と実感するためには、大勢の人が株式や投資信託を持たなければならないのです。

そのためには、誰もが簡単に投資できる環境を整備する必要があります。
たとえば、コンビニエンスストアでインデックスファンドを購入できるようにすればいいのではないでしょうか。

1000万円する自動車でも、ディーラーに行けば簡単に購入できます。それなのに、1000円のインデックスファンドを買うには、口座を開設する際の本人確認をはじめとして、けっこう煩雑な手続きを取らなければなりません。ここをどうにかできないものかと思うのです。

確かに、株式の個別銘柄投資をする投資家に対しては、本人確認の手続きなどが必要になるでしょう。インサイダー取引の温床にされてしまっては、それこそ市場の信頼性が損なわれてしまいます。

でも、インデックスファンドやETFの場合、インサイダー取引も何もありませんから、いちいち細かく本人確認をする必要もないと思うのです。

コンビニエンスストアに置いてあるマルチメディア端末を使ってインデックスファンドを簡単に購入できるような仕組みをつくれば、誰でも手軽に投資に参加できるようになります。

コンビニエンスストア以外にも、たとえばデパートでもいいし、本屋でもいいでしょう。

もちろん、証券会社や銀行などの金融機関以外でインデックスファンドやETFを、本人確認などの手続きをせずに、簡単に買えるようにするためには、法改正なども必要になるので、実現するには時間を必要としますが、誰でも気軽に投資できるようにするための方策として、検討する価値はあると思います。

松本 大 マネックスグループ会長

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まつもと おおき / Oki Matsumoto

1963年埼玉県生まれ。1987年東京大学法学部卒業、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券入社。1990年ゴールドマン・サックス証券に転じ、1994年史上最年少の30歳で同社のゼネラル・パートナーに就任。1999年ソニーとの共同出資でマネックス(現マネックス証券)を設立。25年間、社長・CEOとしてマネックスを牽引し続け、2023年6月より現職。経済審議会委員、 東京証券取引所その他複数の上場企業の社外取締役を歴任。現在はルビ財団ファウンダー・評議員、マスターカード社外取締役、ヒューマン・ライツ・ウォッチ国際理事会副会長、日本将棋連盟理事も務める。

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