東証が上場企業のPBR(株価純資産倍率)が低いとの問題提起から、企業が株主還元策を相次いで公表し、「PBR祭り」で株価が上昇、日経平均はバブル後の高値を更新した。
東証改革に深くかかわってきたマネックスグループ創業者で会長の松本大氏は、「多くの国民が喜んで株式や投資信託などを持つ国になれば、株価の上昇で、個人の資産価値が上がり、生活にゆとりが出る。ローンや奨学金の返済も楽になる。年金のリターンも高まり、老後不安も減る。日本経済の風景を一気に変えられる」と言う。
しかし、株価が上がっても他人事に思えるのはなぜか。貯蓄が増えても不安がぬぐえないのはなぜか。それらの疑問に答えるべく、「資本市場を活用して日本を復活させる方法」をまとめた新刊『松本大の資本市場立国論』を上梓した松本氏が、「株価上昇が私たちの幸せにつながるために必要なこと」について解説する。
多くの日本人が資本市場の恩恵を受けていない
アメリカでは株価の上昇が、3億3000万人超いるアメリカ人の幸せに直結しています。
株価が上がれば、投資信託を通じて投資している個人の資産価値が上がり、老後の生活資金を賄う年金のリターンが高まり、企業活動も活発になり、経済全体の底上げにつながります。さらに、大学が寄付金基金を運用するエンダウメント投資のリターンが向上し、大学で学ぶ学生にとっても、その恩恵を享受できる仕組みになっています。
このように、生活のさまざまなところで資本市場にコミットしているため、逆にアメリカでは株価が上昇し続けないと、基盤そのものが崩れ落ちる恐れがあります。
だからこそ、そうならないようにするため、企業は常に業績を伸ばす努力をし、自社株買いや配当などで株主からの期待に応え、さらに年金基金やファンドなどの機関投資家は、受益者からの負託に応えるため、受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)を忠実に守ろうとしているのです。
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