ということで、資産所得倍増プランによって株価が上昇することには、おおいに期待したいところです。
ただ、資産所得倍増プランとして7つの取り組みが挙げられているものの、やや力不足の感は否めません。株価を上げるためには、もっと本質を突いたアイデアが必要です。
そこで必要となる視点は、アメリカのように、株価上昇がすべての日本人の幸せにつながり、誰もが株式に投資したくなる仕組みをつくることなのです。
東証の市場改革で上場企業はどう反応したか
そのひとつの試みが東証改革です。当初、新市場区分が行われたとき、激変緩和措置として、経過措置が設けられました。しかし、経過措置の期間を「当分の間」としたことが、大きな間違いでした。
東京証券取引所からすれば、上場企業は一種のお客様みたいなものですから、そこに対する忖度のようなものも、多少はあったのかも知れませんが、当分の間という期間設定では、結局のところ誰も、何もせずに、ダラダラと時間だけが過ぎてしまうという結果になりかねません。
そこで「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」が設立され、そこでの議論を通じて経過措置を終了する期間が明示されました。これは大いなる前進です。
ちなみに経過措置の今後のタイムテーブルですが、3月決算企業の場合、2023年1月時点でプライム市場の上場維持基準を満たしていなかった場合は、2026年3月末時点で上場維持基準に適合しないと、上場廃止の可能性がある監理銘柄に指定される予定です。
もちろん、プライム市場の上場維持基準を満たしていない場合、その下のスタンダード市場に指定替えすることも可能です。
プライム市場に上場していて、経過措置の適用を受けている企業からすれば、プライム市場に残れるかどうかの時間を切られたわけですから、反対意見も出るのではないかと考えました。
ところが、経過措置のさらなる延長を求めたり、反対意見を申し出たりする企業は、ゼロでした。これは、発行体である上場企業自身も変わってきたからだと思います。上場維持基準を満たしていなくても「上場したら一生横綱」としてプライム市場に残り続けることが許される時代ではないことに、多くの企業が気付いているのです。
もうひとつ、今回の東証の改革で特筆したいのは、PBR(株価純資産倍率)が1倍を割り込んでいる企業に対して、現在の水準を引き上げるための具体的な施策の開示を求めるようにしたことです。これによって自社株買いや増配などの株主還元を積極的に行う動きが顕在化し、今の株価上昇につながっています。
ただ、この方法は根本的な問題の解決にはなりません。大事なことは生産性や投資効率を高めることによって収益力をアップさせ、それを株価上昇につなげることです。
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