しかし残念なことに、レプチンにも限界があることが判明します。肥満患者の多くは、血中レプチン濃度が高いにもかかわらず、レプチンに対する反応がとぼしくなり、食欲が抑制されないのです。
つまり、食べすぎを続けて肥満状態になると、レプチンが分泌されても体が反応しなくなる「レプチンの鈍感化」が発生することがわかりました。レプチンに鈍感になると、外部からレプチンを取り入れても、太らない効果を発揮することができなくなります。
この状態を打破するには、レプチンに鈍感になった体に何らかの刺激を与え、再びレプチンに対する敏感さを取り戻す必要がありました。
レプチンの鈍感化を防ぐために
そこで、現代のツバスタチンAの話に戻ります。ミシガン大学の研究者たちは、「レプチンの鈍感化」を防ぐ方法を調べました。
研究者たちはレプチンと相互作用する細胞内の酵素をリスト化。それらを阻害する薬をマウスにひとつずつ投与する地道な作業を繰り返し、ツバスタチンAを発見しました。これは私たちの身体のレプチンに対する敏感さを取り戻させ、体にもともと備わった肥満防止システムを再活性化させることができます。
ただ残念なことに、ツバスタチンAには無視できない毒性があり、すぐにでも夢のヤセ薬が即座に開発できるわけではなさそうです。研究者たちは今、ツバスタチンAの構造を参考にして、毒性を発揮せずにレプチンに対する敏感さを取り戻せる化合物を合成していくことを試みています。
食事制限や運動が理想的なことはいうまでもありませんが、なかなか食欲には勝てないものです。本来私たちに備わっている肥満を制御する能力を引き出してダイエットできれば、それはまさに夢の薬になるでしょう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら