四谷大塚「女児盗撮事件」で見えた性犯罪抑止の穴 「大人2人共謀」という事態にどう立ち向かうか
個人がシッター事業を行う場合、児童福祉法に基づき、認可外の居宅訪問型保育事業者として自治体へ届け出をすることが義務付けられている。1人で稼働する場合であっても「認可外保育施設」として扱われるわけだ。
しかし、従来、このようにして登録しているシッターが性加害などによって保育事業者としての行政処分を受けても、別の自治体で登録しなおすと、情報が他の自治体に引き継がれなかった。そこで、この制度により共有できるようにしたというわけだ。
実質的には、この仕組みにより、行政処分を受けたシッターは、その後シッターとして働くことに抑止がかかる。このような議論には、加害者の「職業選択の自由」を脅かしているのではないかと言われることがあるが、小児性犯罪には「依存症」のような特性を抱えていると指摘する専門家もいる。
精神保健福祉士・社会福祉士で、著書に『小児性愛という病―それは、愛ではない』(ブックマン社)などがある斉藤章佳さんは、アルコール依存症に置き換えて考えればわかりやすいと話す。
アルコール依存症の人の周囲に酒がいくらでもある環境で働けば、頭ではダメだと思っていても口にしやすくなる。子どもに対して性犯罪を起こした人物を再び子どもと密接に関わる職場に戻せば、再犯を起こしやすくなるというわけだ。
だからこそ、一度、小児性犯罪を犯した人物を、子どもに関わる仕事に近寄らせないことは、次の被害者を生まないため、そして加害者に犯罪を繰り返させないためにも重要だ。
見送りとなった日本型DBSの課題
シッターの性犯罪報道をきっかけに、日本におけるシッター情報のデータベースが成立したわけだが、教員や保育士についても性犯罪の再犯を防ぐ取り組みが相次いで整備されている。
2021年5月には、わいせつ行為を行って免許状が失効した教育職員等の情報が登録されたデータベースの構築や、当該者の免許の再授与にあたって裁量をもたせることなどを内容とする議員立法「教員による児童生徒性暴力防止法」が成立。2022年6月には改正児童福祉法で教員と同様に「児童へわいせつ行為を行った保育士の資格管理の厳格化を内容とする改正」が行われた。
しかし、これらの問題は、それぞれの制度が行政の縦割りの壁にはばまれており、また学習塾やスポーツクラブなど、制度でカバーできない領域も非常に多いことだ。たとえば犯罪を犯したシッターが、シッター以外の仕事で子どもと関わろうとすれば、行政処分歴が共有されることはない。また、学校でわいせつを働いた教員が塾などで働き始めることもできてしまう。
イギリスでは、このような縦割り問題を起こさないため、子どもに一定時間関わる大人には仕事であれボランティアであれ、犯罪歴などの全ての情報を網羅する仕組みがある。イギリスでは、子どもに関わる仕事に就く際、Ofstedという教育監査機関に、個人登録しなければならない。その際に、登録要件の確認として、DBS(犯歴等データの照会サービス)の証明書をOfstedに提出して登録される。
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