「日本電産元社長」が率いる顕微鏡メーカーの進化 100年超の歴史を持つオリンパスの祖業が母体

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先述したようにエビデントは、もともとオリンパスの科学事業だった。高性能な顕微鏡の国産化を目指して1919年に設立したオリンパス(創業当時は高千穂製作所)の祖業でもある。

その長い歴史を引き継いだエビデントは現在、世界トップ級の顕微鏡シェアを誇る。とくに、採取した組織や細胞などから作った標本を基に病気の診断をする病理検査向けの顕微鏡に強みがある。

顕微鏡をシンプルに説明すると、「対象物を拡大して観察するための道具」となる。だが、その手法は日々進歩しており、さまざまな製品がある。

上からのぞくタイプの一般的な顕微鏡だけでなく、下からも観察できるものや、自動的に明るさやピント合わせをして画像の保存までできるものもある。

市場は限定的でも不可欠な顕微鏡

蛍光色素などを使って細胞内の特定の部位や物質を可視化して観察する蛍光顕微鏡のような、新たな製品の開発も進む。

医療・生物学分野の進歩には顕微鏡の進歩が不可欠であるため、「よりよくものを見たい」という需要はなくならない。エビデントの売れ筋も1台300万~400万円ほどする研究向けの高価なものだ。

「市場は限られるが、顕微鏡の進歩なくしては科学技術の進歩はない」

エビデント会長の齋藤吉毅氏は、その重要性を強調する。オリンパス時代の科学事業部長で、エビデントとして分社化した後の1年間は社長兼CEOを務めた「その道のプロ」だ。現在、日本顕微鏡工業会の会長職にも就いている。

エビデントの顕微鏡
エビデントが強みを持つ顕微鏡は、理科室などにある筒状のものとは大きく形状が異なる(撮影:梅谷秀司)

エビデントのもう一つの代表製品は工業用内視鏡だ。奥行きのあるものを分解せず内部を点検するための装置で、航空機エンジンや建物の配管内部の点検で主に使用される。

ピラミッドや古墳の内部調査や、災害時にがれきの中に人が取り残されていないかを点検することなどにも使われているという。市場は幅広い。

エビデントはオリンパスの科学事業時代から、1000億円強の売り上げを安定して上げている。営業利益率も5~10%の間で推移。振れ幅はあるものの収益性は徐々に高まっている。

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