オリンパスは現在、内視鏡などの医療分野に注力している。その過程で分社化しファンドに売却したのは、科学事業だけではない。カメラや録音機を手がけていた映像事業も同様だ。
科学事業と違って赤字が常態化していた映像事業は、2020年に分社化されOMデジタルソリューションズとなった。その後、投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)に譲渡された。
元ソニーのパソコン事業であるVAIOの再生などで実績があるJIPの指導のもと、収益性の向上に取り組んでいる。オリンパス時代に映像事業部長だった杉本繁実氏が、分社後から現在まで社長として同社を率いている。
科学事業部長だった齋藤氏が会長、ベインのエリック・アンダーソン氏が社長兼CEO、その後吉本氏が社長兼COOとなったエビデントとは、分社後の道がずいぶん異なる。
意識するのは「アジリティ」
エビデント社長として自身に課せられた役割を、吉本氏は次のように自己分析する。
「過去に経営を経験した企業でも、日本発の技術を活かした製品を海外展開してきた。海外展開に必要なチームマネジメントを期待されているのでは」
エビデントに限らず多くの日本企業では、海外の市場深耕が課題だ。エビデントの海外売り上げ比率は8割超。今後も成長を続けるためには、世界の最先端の研究ニーズ、検査ニーズに沿った製品を、需要を先回りする早さで出し続けなければならない。
顕微鏡を売るだけでなく、観察や診断の効率化・高精度化に資するソフトウェアの開発にも今後注力する。技術進化の速いソフトウェア分野では、サービスを提供し、顧客にとって満足のいく形でアップデートしていくためには、これまで以上にスピード感のある組織であることが求められる。
スピード感を武器に市場を席巻してきた日本電産で学んだことは、組織の風土作りの重要性だ。日本電産では、普通の会社なら1年かけて進むことが1カ月で動くという。
「必要な早さは自分たちが決めるのではなく、顧客や競合他社の動向で決まる。『早く動くことでいいことあったよね』という成功体験を積み上げることで、どんなスピードにもついていける、アジリティ(敏捷性)のある組織にしていく」
従業員はグローバルで約4300人。事業で100年以上にわたる歴史を持ちながら、設立は2年前という若い企業。オリンパスからの独立により投資判断など素早い意志決定が可能となり、身軽になった。新社長としての吉本氏の経営手腕から目が離せない。
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