ChatGPTなど「生成AI」は企業をどう変えるのか 人材、EC、メディア…各業界が激変する可能性

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《EC業界》

生成AI技術の進化により、一次情報(商品情報やユーザーの購買履歴など)をまとめ、個々のユーザーに対して直接パーソナライズされた商品やサービスのレコメンドが提供可能になります。例えば、大規模言語モデルは、ユーザーの検索履歴や購入履歴からその人の関心を理解し、それに基づいて新商品の推奨文を自動生成するはずです。

特に昨今では、メーカーが直接ユーザーと取引するD2Cの注目が高まっています。ECサイトを使わずとも、SNSなどを通じてユーザーと関係性を築き、自社サイトを通じて商品を購入してもらうことで、利益率の向上や長期的なエンゲージメントの形成を狙えるのです。

例えば生成AIは、SNS上のユーザーとのコミュニケーションを自動化し、製品に関する質問に自動で返答したり、個々のユーザーの反応に基づいてパーソナライズされたマーケティングメッセージを生成したりするでしょう。

これから生成AIが発展するなかで、直接様々な商品の情報をユーザーに提供し、そのまま購入できるようになれば、ECサイトの概念そのものも変化する可能性があります。AIによって自動生成された詳細な商品説明やレビュー、購入者の反応などが、各ユーザーに対してパーソナライズされ、直接商品購入のページに統合されれば、消費者の購買体験は大きく変化するはずです。

ビジネスモデルの二極化が進んでいく

《メディア業界》

生成AI技術の進化は、メディア業界にも大きな影響を及ぼします。

まず、ニュースや記事の生成は、AIによりますますパーソナライズされ、ユーザーの興味や過去の閲覧履歴に基づく情報が提供されるようになるでしょう。メディア企業は一次情報(特定のニュースイベント、読者の閲覧履歴や興味など)から、読者一人ひとりに対するカスタマイズされたニュースフィードや記事を生成し、提供できるようになります。

一方で、記者の仕事も変化するはずです。編集長のような視点で生成AIを活用したり、現場に足を運んで生成AIが得られない一次情報を得たりすることの重要性が高まっていくでしょう。

また、メディア業界でも今後はユーザーとのダイレクトのつながりが重要になるはずです。伝統的に、メディア企業はメディアに広告を掲載することで収益を得てきました。しかし、D2Cのモデルを取り入れることで、メディア企業は自社のコンテンツやサービスを直接読者に提供するなど、広告に頼らない収益源を作り出すことができるはずです。例えば、オンラインサブスクリプション、有料ニュース、専門的なリポートや記事、ウェビナーなどがそれにあたります。

このように、情報を次元で区切ってみてみると、様々な業界の情報の構造が大きく変化し、あわせて人間の重要性やビジネスモデルが変化することを具体的に理解できるでしょう。各業界共通して言えるのは、ビジネスモデルの二極化が進んでいくということです。

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