ChatGPTなど「生成AI」は企業をどう変えるのか 人材、EC、メディア…各業界が激変する可能性

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私は、現時点では一次情報を得る力は人間の方が高く、今後もしばらくはこの状態が続くと考えます。一方で二次情報を組み立てるのは、生成AIが優位になっていくはず。すなわち、一次情報の収集力と二次情報を生成するAIのマネジメント能力が、ますます人間に求められるわけです。あわせて生成AIを搭載したプラットフォームが今後も発展していき、一次情報を持つ企業(データホルダー)との連携が強化されることが予想されます。

これは、人間にとってはなかなか難しい時代ですが、同時にこのビジネスモデルの変革に伴い、新たなビジネスチャンスが生まれることになります。特に重要なのは自社が持つ一次情報の優位性を考えること。取材、リサーチなどにより、生成AIを超える範囲、深度での各業界の一次情報を保有すれば、他社の追随を許さない競争優位性の源泉となるはずです。

生成AIを活用したプラットフォームが様々なツールと連携する時代

これからは、生成AIを搭載したプラットフォームと様々な一次情報を持つデータホルダーとの連携が強化されるだけでなく、生成AIが様々なツール、サービスを仲介する存在となっていくと私は予想します。あらゆるサービスが生成AIの機能を搭載し、まるで一人ひとりに秘書がつくようなイメージで業務が推進されるようになるはずです。実際、ChatGPTはプラグインを提供し、「食べログ」などの様々なサービスが連携した機能の提供をスタート。APIの提供も加速度的に拡大しています。

また、この考え方は「入力がテキストである」という前提になっていますが、今後の生成AIは、csvなどのファイルや画像、音声など様々な情報を複合的に入力できるように進化していくことが予想されます。様々な情報を処理できるようになれば、さらに秘書としてのAIの役割は増え、利便性が大きく向上するはずです。

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しかし、プラットフォームの連携にはいくつかの課題も存在します。それはセキュリティやプライバシーの問題、データの正確性や信頼性の確保などの課題です。

また、今後、生成AIが人間の意図や価値観をどれくらい理解できるようになるのかというのも重要な視点です。異なるツールやサービスの組み合わせによって生じる互換性の問題も解決すべき課題といえるでしょう。

このような課題に対応するためには、産業界や政府、研究機関は、相互に連携して標準化やガイドラインの策定を行う必要があります。2023年5月には、生成AI活用普及協会が誕生。産業の再構築を見据えて、生成AI活用を社会に実装していくために、スキルの習得・可視化を推進しています。

生成AIを活用したプラットフォームの連携は大きな可能性を秘めており、より効率的でパーソナライズされたサービスの提供や新たな価値の創造が期待されます。産業界が連携し、課題を解決しながら安全で持続可能な連携環境を構築することで、より良い未来を築いていくことができるでしょう。

小澤 健祐(おざけん) AI専門メディア「AINOW」編集長

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おざわ・けんすけ / Kensuke Ozawa

日本最大のAI専門メディア「AINOW」の編集長。ディップ株式会社で生成AI活用推進プロジェクトを進めるほか、AI活用コミュニティ「SHIFT AI」のモデレーターとしても知られる。株式会社Cinematorico/COO、株式会社テックビズ/PRディレクター、株式会社Carnot/事業戦略担当、Cynthialy株式会社/顧問、日本大学次世代社会研究センター/プロボノとしても活躍。

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