東芝でボロ儲け、4500億円超を稼いだファンド群 2017年からのファンド株主の利益を独自に試算
翌2022年3月の臨時総会には事業ごとに会社を3分割する案(後に2分割案に修正)が提示されたが、これもファラロンなどからの強い反発を受けて否決された。今度は会長から社長へ復帰していた綱川智社長が退任に追い込まれた。
結局、今回のTOBを取りまとめたのは外部から招聘した人材だった。M&Aアドバイザリー大手のGCA(現フーリハン・ローキー)を設立し、2022年6月に東芝の社外取締役に就任した渡辺章博・取締役会議長と、2018年にシーメンスからスカウトされてきた島田太郎・現社長だ。
つまり増資は、あくまでアクティビストを呼び寄せたきっかけにすぎなかった。東芝自身が株主とのコミュニケーションや対応でミスを重ねたことがさらなる不信を呼び、経営の混乱を招いたというのが実態ではないか。
だとすれば東芝とアクティビストの関係は、対立構図というよりも、弥縫策を講じた経営陣がアクティビストの主張に敗れ、徐々に後退を余儀なくされたといったほうが適切だ。
社長直下組織設置しテコ入れへ
東芝は11月下旬に臨時株主総会を開き、JIP連合以外の株主から強制的に株式を買い取る「スクイーズ・アウト」を決議する予定。2023年内にも上場廃止となる見込みだ。
再起に向けた動きはすでに始まっている。
10月1日には組織再編を実施した。社長直下組織としてグループ経営統括部を設置し、全社戦略を検討するほか、エネルギー、インフラ、デバイス、デジタルの4部門と本社でスタッフ部門を統合する。分社化によって生じてきた「内部硬直性」を解決するための統合だという。
島田社長は過去の東洋経済のインタビューで、「すべてがデータ化され、それらのデータが正確につながる世界が到来する。それによって革新や最適化がありとあらゆるところで起きる」と発言。データ事業を主軸とした成長ストーリーを描いてみせた。
ただ、具体的な成長施策はまだ打ち出されていない。非上場化でアクティビストは経営から姿を消すものの、今度は2兆円の資金を供出したメガバンクやローム、オリックスなど新しい株主が東芝の一挙手一投足に目を光らせることになる。
「アクティビストを儲けさせただけ」で終わらないために、非上場化したからこそ取り組める大胆な改革が東芝には求められている。
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