森トラスト社長「五輪後に経済の"崖"が来る」 不動産業界の重鎮が見通す、5年後の日本
東南アジアや中国の観光客は「温泉」「富士山」「雪」が好きで、そのうち2つがそろっている箱根は外国人観光客の人気が高く、さらなる発展が期待できる。
奈良にも、4つ星ぐらいの国際級高級ホテルを建てる計画がある。奈良には良質のホテルが極端に少ない。また、奈良の歴史や仏教の歴史を知らないと、訪問しても面白くもなんともない。これが建物や庭などの観賞を楽しむ京都と違うところ。
そのため、高級ホテルを造り、欧米人や中国人の観光客に奈良の歴史や文化を啓蒙していこうと考えている。たとえば、シルクロードとのつながりがある唐招提寺の魅力を宣伝すれば、中国人の訪問も増えるだろう。
インバウンド需要は東京オリンピック後も、かなり増えていくと見ている。一方で、この業界も人手不足の問題が顕著になるのではないか。ホテルをマネジメントする人や、メンテナンス面を切り盛りする人など、多方面の専門家が求められるだろう。たとえば当社がマネジメント業に進出する可能性もあるし、その分野の会社を買収することも考えられる。
日本は自らお客を断っている
――不動産業界を活性化するため、政府に求めることは何でしょうか。
東京オリンピックとは関係なく、短期的、中期的、長期的に、規制緩和や構造改革を実施しなければ、日本の財政が破綻しかねない。今後は少子高齢化がさらに進む。医療、農業、雇用といった分野で構造改革を行い、労働規制を含めた規制緩和をして、生産性を上げる必要がある。それによって、人とカネが世界から集まるようにしなければいけない。
ホテル業界も人手不足なので、お客さん(観光客)と一緒にホテルスタッフ(労働者)も来てもらわなければいけない。となると、就労ビザも在留期間5年ではなく、10年ぐらいに伸ばす必要がある。
法人税をさらに下げることも求められる。一般論としては、法人税は減らすほうが全体効率がよい。世界から企業や人が集まり、仕事が増え、企業の利益が上がるから、配当や株も上昇する。その結果、税収が上がる。法人税が高い現在の日本は、自分たちでお客さんを断っているのかもしれない。潜在成長力を押し上げなければいけない。
(撮影:今井康一)
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