森トラスト社長「五輪後に経済の"崖"が来る」 不動産業界の重鎮が見通す、5年後の日本

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東京オリンピックの後に不景気が来て、マイナス成長になって、国債価格が下がって金利が上昇する。となると、借金を抱えているデベロッパーはもちろんのこと、オリンピック景気で戦線を広げた日本企業全体に、ドスーンと不況の波が襲ってくることになりかねない。

五輪後は供給過剰が問題になる懸念

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森トラストが2008年に取得した虎ノ門パストラル跡地

――不動産業界は供給過剰問題に直面するのでしょうか。

オフィスビルは現在、好立地エリアでの供給が増加傾向にある。特に、都心3区(千代田、中央、港)に集中している。これらの地区で新築ビルが今後数年で大量に竣工するため、東京オリンピックの後に供給過剰問題が出てくる懸念は確かにある。

ただ、森トラストは周囲の需給バランスとは関係なく、開発事業に取り組んでいる。こだわっているのは「高付加価値」。災害に強く、省エネ性能に優れ、国際的なホテルを併設した、競争力の強い、最新性能のビルを建てることで差別化する、ということだ。オフィスビルの満床を急ぐことも基本的にはない。慌てないでテナントを集めるほうが、いい結果(高い賃料でテナントが集まる)になることもある。

――ミニバブル期に取得して“塩漬け”になっていた虎ノ門パストラルの跡地(港区)でも、再開発事業を計画しています。

編集部注:森トラストは2008年1月、不動産投資会社と共同でパストラルの土地と建物を2300億円で取得したものの、その後に不動産投資会社が債務超過に陥ったため、共有持分50%分を引き取り、単独所有していた。2011年3月期決算で巨額の土地評価損を計上した。

虎ノ門パストラルの跡地(虎ノ門トラストシティ ワールドゲート)は開発許可が下りて、建築が可能になり次第着工する予定で、2016年中になりそうだ。オフィスやホテル、サービスアパートメントなどで構成される高さ180メートルの高層ビルを建設する。2019年に竣工予定だが、東京オリンピックの前後を意識しているわけではない。 

ほかにも、赤坂ツインタワー本館・東館や三田エリアの3棟の建て替えを計画している。ツインタワーは着工時期が決まっていないので、竣工は結果的にオリンピックの後になりそうだ。三田エリアの3棟については、ツインタワーより後になるので、これもオリンピック後の竣工になるだろう。

――ホテル事業の展開も加速しています。確かに、インバウンド(訪日外国人)需要が期待できそうですが、懸念材料はないのでしょうか。

2014年10月に箱根の温泉旅館「箱根強羅温泉 静峰閣 照本」の土地・建物を取得した。2種の温泉源泉があり、ポテンシャルの高い旅館だ。今後は、各部屋に露天風呂を備える高級宿泊施設に建て替える予定。外国人観光客の中期滞在需要に対応できるような旅館にしたい。

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