森トラスト社長「五輪後に経済の"崖"が来る」 不動産業界の重鎮が見通す、5年後の日本
マンションも、これから1~2年は徐々に価格が上がると見る。一方で、建築費が高いので、2016年あたりに完成してくる物件はコスト高が反映されることになる。竣工してまもない物件は価格がより高くなることが想定されるため、今年よりも前に竣工した新築の需要が増え、それにつれて中古物件の需要も増加するのではないか。
ホテルも訪日観光客が増えているので、稼働率が向上し、部屋代も上がっている。高級な部屋だと、前年よりも2割ぐらい上昇している。それでも、ニューヨークの同じランクのホテルを比べると、部屋代は円安を考慮に入れても、日本のほうがまだ安い。東京オリンピックの後も、ホテルについては需要が落ちないだろう。
山の先には“崖”が来る?
――ホテルを別にすると、不動産の大型取引やマンション需要は、東京オリンピックが開催される2020年頃が1つの節目になる、ということでしょうか。
オフィスビルやマンションは東京オリンピック後、難しい局面が来るのではないだろうか。私は「オリンピックの崖」と表現している。
50年前の東京オリンピックの後も日本経済が不景気に陥ったが、それでも当時は潜在成長率が10%程度あったため、徐々に活気を取り戻していった。一方、現在はそれほど成長率が高くないにもかかわらず、いっさいがっさいがオリンピックまでに構築される計画になっている。
オフィスビルは昨今の建築費高騰や労働力不足などによって建設工事が遅れぎみということもあり、東京オリンピックまでの短期間に竣工が集中する。地方創生などの政府施策も、オリンピックまでの期間に実施される見込み。オリンピック前に好景気の山、つまりその後の“崖”を築いているような感覚だ。
問題は、その後どうなるか、だろう。日本の潜在成長力が1%程度の状態であることを考えれば、需給バランスが崩れ、日本経済がひっくり返るぐらいの異変が起きるのではないか、と見る。50年前のオリンピック不況を経験していない方も多いだろうから、想定している以上に混乱が起きる可能性がある。
金利の動向にも注視が必要だろう。ここ数年は金利が低いので、不動産デベロッパーがビル新築や再開発事業を積極化していることは正しい行動だといえる。だが、このような積極投資は一方で、デベロッパーの借金が増えることも意味する。
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