郊外・庭付きの実家が「迷惑資産」になるワケ

1億円超で買ったが今や2000万円台に

JR東京駅から京浜東北・根岸線で電車に揺られ約1時間。JR港南台駅を降りて、そこからバスで約15分ほど走ると、見晴らしのいい小高い丘の上にある高級住宅街にたどり着く。横浜市栄区庄戸(しょうど)。1戸当たり80坪以上の広々とした区画には、庭付きの立派な住宅が建ち並ぶ。周囲には商業施設がほぼ見当たらず、木の葉が舞い落ちる音さえ明瞭に聞こえるほどの静かな地域である。

今から30年前。ここは1区画あたり1億円を下らない価格で分譲された。折しもバブル経済の絶頂に向かって日本全体が活気に満ちていたころ。土地の価格が上がり続け、郊外の一戸建てを求める需要も活発だった。政治家やパイロット、大企業の役員らがこぞってこの地の家を買い求め、朝夕の通勤時間帯にはハイヤーが行き交った。

しかし今、庄戸の資産価値は激減している。中古住宅の相場は1区画あたり2000万円台と30年前の5分の1にまで落ちている。

12月上旬、JR港南台駅と庄戸地区を30分間隔で巡回するバスに乗ってみた。乗客のおよそ8割は70代以上とおぼしきお年寄り。平日の昼間だったからか、バスの乗降客のほかにはほとんど人が歩いていない。

庄戸の一戸建てを購入した世代の多くは、現在70代。子どもたちは進学や就職、結婚を機に都心へ住まいを移し、交通の便が悪い実家には戻ってこない。その結果、高齢夫婦や高齢単身者の世帯が多数を占めるようになった。すべての窓に雨戸が下り、長らく人の住んでいる気配がない”空き家然”とした物件がいくつかあった。といっても、どの空き家も定期的に整備はなされているようで、周囲の景観を乱しているわけではない。

なぜ庄戸の資産価値は急落したのか

「正直、今最も資産査定にうかがいたくない地区ですよ」。港南台駅前の不動産屋の担当者は、「庄戸」という地名を聞いただけで顔をしかめた。

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